下拵え その1
下拵え その1
荒れ狂う樹木の化け物……俺が鍋を投げたのが原因で……しかも湖にはリザードマンが居るとの事。とんでもない事をしてしまったと顔から血の気が引くのが判る。
「モモンガさん。あの樹倒せないか?」
「倒す事は出来ますよ?ですが意味ありますか?」
リザードマンはユグドラシルに居ない種族なので興味はありますが、労力を使う事もありますか?と問いかけられる。だからなんでこういう時にオーバーロードの精神性が出てくるかな……
「レベリングが出来るのか試したいって言っていたじゃないですか、助ければ恩に感じてくれると思いますよ?」
本当はそんな事は考えていないが、俺ではあの化け物を倒す事が出来ないので、利用価値があるから助けましょうという方向で説得を試みるが……
「ふむ……確かにクレマンティーヌを酷使するわけには行かないが……だがリザードマンである必要が感じられませんね」
……ぬう……リザードマンを助けたいという方向性じゃ駄目か……何か何か無いかと考え樹木の化け物を見つめていると食材適正の数値が浮かんだ。
「モモンガさん、あのモンスター食材適正、80、60、55って破格の数値を持ってるぞ」
「ほう。それは興味深い、あのモンスターの何処に食材適正があると?」
距離があるのでそこまでは判らない。だけどこの世界でもっとも食材適正が高い個体だ。
「後あの湖。綺麗な淡水だ、魚も生息していると思う。食材を定期的に確保できるのは重要じゃないか?リザードマンは可能なら配下に加えるって感じで」
「配下に加える必要性は見えませんが、カワサキさんが料理したいと言うのならあの樹を倒すとしましょうか……ふむ、守護者もナザリックに閉じ込めている訳だ。連れて来て、守護者にやらせてみましょうか」
何とかあの怪物を倒す方向性になってきた事に安堵する。俺の軽はずみな行動でリザードマンの集落が潰れるというのを見ているのは心苦しい……
「トブの大森林に破滅の竜王とかいうのが居るって言ってたけどあれか?」
「どう見ても、トレントかイビルツリーですが……もしそうなら漆黒聖典を引き寄せる餌になりそうですね。よし、あれの原型が残る程度に叩きのめして、漆黒聖典をおびき寄せる餌にしましょう」
漆黒聖典をおびき寄せる餌を確保するついでだが、とりあえずあの樹の化け物を倒す事で決まった事に安堵する。
「では1度ナザリックへ戻りましょう。クレマンティーヌにも話を聞きたいので、アルベドに連絡を入れておきます」
「……判った」
これがモモンガさんにとっての譲歩だ。後は俺達が戻る前にリザードマン達が全滅しないように祈るしかない。
(感情的になったら駄目だな)
俺が感情的になって鍋を投げたのが原因だ。今度から絶対にするまいと心に誓い、今度やるならハンマーで叩き潰そうと決めたのだった……
「顔を上げ、至高の御方の御威光に触れなさい」
……玉座の間に戻ると守護者達が片膝立ちで待機していた。モモンガさんの命令だろうか……メッセージでアルベドに連絡すると言っていたけど……これは予想外の光景だ。モモンガさんがゆっくりと王座に腰掛け、
「カワサキさんもどうぞ」
何時の間にかその王座の隣に同じような王座が用意されていた。……俺には場違いだと思うんだが、座らない訳にはいかないか……
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