ハーメルン
逆行した進藤ヒカルが今度は悪役(仮)を目指すようです。【完結】
第十五話
●アメリカに住んでいる男性達side
「Fooooooooo! あのfiveの対局をリアルタイムで見られるなんてラッキーだ。連絡をくれたキミにハグをしてピザにコーラで乾杯したいくらいだよ」
「おいおい、男同士でハグは勘弁してくれ。そんな趣味はない」
「冗談さ。もちろんね、じょうだ…─って、ああああああ!そんなところに。そんな場所に打っちゃうのかい?相変わらず、
crazy
(
クレイジー
)
な発想をするものだ。僕にはとてもついていけないよ」
大げさに頭を掻き毟る動作をした男が嘆いた。しかし、目は一向にパソコンから動かず、ひたすらに凝視している。もう一人の男も画面を見て、感嘆のため息をついた。
「相変わらず、何とも奇抜な発想をするものだ」
「奇抜? これを奇抜なんて言葉で済ませる気かい? 少なくとも僕たちに知識がないだけで、これ以上ないくらいの絶好の一手だというのに」
その言葉を聞くともう一人が項垂れた。
「そうだ。今はわからなくても、後々検討をすれば的確な手だというのがわかる。ただ、『後々』なんだ。我々には時間が不足している」
「それも圧倒的に、だ。僕たちは一体何度、新手を見ればいいんだい?いっそ新しい定石すらも操っているかのようだよ!」
そうなのだ。この『five』という日本のアカウントは負けなしで、圧倒的な実力で他者を跳ね除けている。連戦連勝、未だ負けは一度もない。ちなみに、噂だとチャットはどれも拒否されているそうだ。
無論、それだけでも注目されるには充分だが、他にも色々な要素があるのだ。──それは碁の内容。第一印象として受ける印象は『強さ』であったり『真摯な碁』というものかもしれないが、違う。
それは根本を間違えているのだ。本質は別な場所にある。
一局一局がどこまでも深いのだ。対局を検討すればするだけ、見えてくるものがある。──新しい発見があるのだ。
だからこそ、fiveの碁には検討が必須と言われている。ただ、一見だけでは見逃してしまう要素がたっぷりとあるのだから。
例えば見ている側に美しい石の流れを感じさせるものだったり、見ているだけで度肝を抜くような発想の一手を平気で打ったりするのだから、碁打ちにはたまらない。
まるで宝さがしの様だった。気分はトレジャーハンター。深く探っていけば思わぬ発想を得られることが出来るのだから。
勉強になるなんてレベルではない。正に例えるなら『目からウロコ』状態なのだ。
この二人の男も、何度パソコンを覗きながら「ワオ!」やら「オーマイガー(なんてこった)」と言いまくったか分からない。数えるのすら億劫になる。
つまりは全くもって目が離せないのだ。次には『何をやらかすのだろう?』『何かやってくれるんじゃないか?』『いや、やるに決まっている!』という期待とワクワク感が観戦者を捉えて離さないのだ。
不定期に現れるfive。不定期だからこそ、粘着してでも現れるのをチェックしてしまう。
しかし、その労力すらも惜しくない。なにせ碁打ちとして、リアルタイムで見れる喜びはこの上ないからだ。
この上ないのだが、惜しむべきは自らの知識不足。
検討はしているものの、意味が分からない手も多い。どうしてなのだろうと思っても、何やらわからないのに盤面をリードしていたり、あっさりと相手の陣地に切り込んでいたりなど、理解が及ばない部分も多かった。
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