ハーメルン
魔法科らは逃げれない。
他人の家の芝は青く見えるが、本当に青かった

「…ここは!?」 

意識を落としたリーナは、目を覚ます。
自分が知っているが住んではいない九島の別荘の部屋の一室で寝ている事に気付くと直ぐに体を起こす。

「…これちゃうな…」
 
「光國!!…よかった、生きてたのね…」 

もしかしたら夢だったのかもと思っていると、すぐ近くのソファーでなにかをしている光國を見て、ほっと一息つくリーナ。
あれは夢じゃないと思い出すのだが、ファーストキスを捧げた事まで思い出して、顔を真っ赤にさせるが


「ッチ」

 
光國はリーナに聞こえるレベルで舌打ちをしたので現実に引き戻される。

「なによ…」 

舌打ちをした事に苛立つリーナ。
自分のファーストキスを捧げたと言うのに、その態度と言うのは気にくわない。

「私、はじめてだったのよ?」 

ベッドから降りて光國に近づいたリーナ。 

「そないなもん知るか。
つーか、それを気にしとるんやったらするな」

「するなって、貴方が指輪を捨てるからじゃない!」

「…あのままやったら死ねたんやけどな」

「っ!ぐぉ!?」 

「オレは現実と空想は分けとるで?」 

死にたい発言を聞いた途端、リーナはキレて振りかぶる…まではよかった。
王道的な展開でいけばビンタをくらって「バカ、死にたいなんて軽々しく言わないで!私は、光國に生きてほしいの!」と言う感じの良い展開になるだろう。
 

「お前、ホンマに何様のつもりやねん」


しかし、この馬鹿は違う。
王道を躊躇いなく潰すイレギュラーである。
リーナのビンタを避けてお腹に拳を叩き込んだ。

「そら確かに死んだら終わりや、けどな、お前はオレの身になった事あんのか?
お前は生まれた時から魔法師の才能があって物心ついた頃には魔法使えて、それの訓練何度かしとるんやろ?魔法と深く関わってるやろ?」

「光國、ごめ」

「謝る謝らんの問題ちゃう。
オレ、ホンマに数ヵ月前まで魔法師のまの字も知らず、その勉強すらしてへんねんぞ?
夕飯を賭けた釣りの最中に事故って魔法師になって、海に落ちて風邪引きかけてきたの知っとる?
テニスのプロに君ならプロなれる言われて、ここまで来て色々な所から名刺を貰ったんやで?」

謝るリーナを許さず、追撃をする光國。 

「お前とオレやったら住む世界が全然ちゃうねんで」 

普通なら格上が格下に言う台詞。
しかし、どっちかと言うか格下である光國が格上であるリーナに言った。 

「今日まで必死になってやった努力全部無駄になって…死にたいと思ったらアカンのか?
確かに死んだら終わりやけど、オレの場合は苦しみから解放されて終わりや、本人が望んで選んだ死は一種の救いや…いっぺん、オレと同じ生き方をして同じ位置に立ってから言ってこい、ボンボンにはボンボンの苦しみがあるのは分かるけど、それと同時に貧乏人には貧乏人の苦しみがあるんやぞ、ど阿呆が…」
 

言いたいことを言い終えるとソファーに座る光國。
握り拳はプルプルと震えており、怒りではなく悔しさの握り拳だとリーナは気付きなにも言わなかった。


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