ハーメルン
今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】
幻覚の中での犯行(もしも、カイに刑が執行されていたら)
「……いつを倒して何になる……!」
「なに?」
「コイツを倒して何になるってんだ!!」
アレクトロは立ち上がると、抑えていた感情を吐き出した。
「どんなに【モンスター】を倒しても、アイツはいない。アイツと死線を潜り抜け、時には助け合い、喜びを分かち合った日々は、もう二度と来なくなっちまった! ――そう思うと虚しくて、あれだけ命のやり取りが楽しかったコイツと闘ってても、抜け殻みてぇにちっとも心が動かねぇんだよ」
「乗り越えろ、アレク」
ベナトールは静かに言った。
「乗り越えるしかねぇ。今は無理かもしれんがな」
「てめぇには感情がねぇのかよ!!」
アレクトロが掴みかかろうとしたその時、【リオレウス】がブレスを吐いた。
「俺が、悲しんでいないとでも?」
ベナトールはそのブレスを、まともに背中で受けた。
「オッサ――!?」
ベナトールは微動だにしないが、ブスブスと音を立てて背中から煙が上がっている。
肉の焼ける匂いが立ち昇る。恐らく背中は大火傷になっているはずだ。
「俺が、あいつをどう思っていたか、知らんとは言わせんぞ? アレクよ」
彼の抑え切れぬ感情が、伝わって来る。
そこへ、突進が来た。
「分かったから後ろ――!」
身構えたアレクトロ。
「邪魔だ!!」
ベナトールは言い放つや否や、振り向き様に【ハンマー】を振り上げた。
正確に頭を打たれた【リオレウス】は、昏倒している。
「……すげぇ……!」
思わず感慨の声を上げたアレクトロ。
「とにかく、こいつが先だ」
「分かった!」
アレクトロは息の合う動きを取り戻し、【リオレウス】に立ち向かって行った。
「アレクよ、先程お前は『アイツはいない』と言ったが――」
【クエスト】成功させ、一緒に【街】に帰りながら、ベナトールは話しかけた。
「カイはいるぞ、ここに」
ベナトールは自分の胸に親指を突き付けた。
「そして、お前のここにもな」
それから、アレクトロの胸に手を当てた。
「お前があいつを想う度に、あいつはお前の傍で生きている。そしてそう想う程、その息遣いが聞こえるはずだ」
アレクトロは、胸に手を当てて目を閉じてみた。
カイが、笑った気がした。
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