ハーメルン
今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】
逆襲競争
そんな状態で上位【グラビモス】の、しかも怒り時のブレスをまともに食らったら、どうなるかアレクトロでも簡単に想像出来る。
「……無念……!」
ベナトールは苦し気につぶやくと、ゆっくり倒れた。
「オッサン! おいオッサン!!」
意識が無いと分かっていながら、アレクトロは呼びかける。
が、二頭がまだいるのを思い出し、【閃光玉】を投げてから彼を担ぎ上げ、丁度隣のエリアだった【キャンプ地】まで逃げた。
「重てぇなオイ!」
半ば投げ出すようにしてテント内の簡易ベッドに寝かせたアレクトロは、状態を見るべくベナトールの防具を引っぺがした。
やはり覆い被さっていたからか、背中の火傷が一番酷く、肉まで焦げている。
【生命の粉塵】をかけてみるも、僅かに皮膚が再生した程度。
ならばと【秘薬】を混ぜてみると、これなら良さそうだったため、【生命の粉塵】やら【回復薬グレート】やらに混ぜて火傷全部にそれを掛け、布でぐるぐる巻きにした。
火傷の範囲があまりにも広かったために、持って来ていた【秘薬】及び回復アイテムが全部無くなってしまったが、今回はもう飲む事はねぇしなとアレクトロは思い直した。
【クエストリタイア】を選ぼうとしていると、ベナトールが呻いた。
どうやらもう意識を取り戻したようである。
「よぉ、しぶといなオッサン」
わざとそう言ってやる。
「……お前は、無事……なのか?」
「あぁ、おかげ様でな」
「……そうか……」
「別に助けてくれなくても良かったんだぜ? そこまでの義理はねぇんだし」
「……が、悲しむ、んでな……」
「誰が悲しむって?」
「……お前が……。お前に、何かあったら……、カイが、悲しむんでな……」
【キャップ】から覗いたその目を見たアレクトロは、なぜか何も言えなくなった。
お互いにもう少しで【クエストクリア】という段階ではあったが、アレクトロは【リタイア】を選んだ。
ベナトールは不服そうだったが、一旦引き返して彼の回復を待ち、仕切り直す。
今度は運が良かったのか、それとも二人の実力だったのか、合流寸前ぐらいに討伐する事に成功し、お互いに命を脅かされる事なく【クエストクリア】出来た。
で、結果はというと――。
「お前の勝ちだ。アレクトロ」
「いやオッサンの方だろ? どう見ても」
「今回は勝ちを譲ってやるよ。俺はブレスを食らっちまったしな」
わざと頭を掻いて見せるベナトールに、「ならそういう事にしといてやるよ」と、こちらもわざとふんぞり返って見せる。
フッと笑ったベナトールに対し、アレクトロは照れ臭そうにした。
「楽しかったぜ、オッサン」
「こっちも楽しめたぜ、アレクトロ」
アレクトロはいつの間にか自分を名前で呼んでくれているのに気が付いて、「アレクでいいよ」と言った。
「また、誘って良いか? アレク」
「あぁ。……でも今度は出来れば【火事場】無しで頼む」
それを聞いて、愉快そうに笑うベナトール。
それを見ていた周りの者は、「お、おい【ベナトール】が笑ってるぞ!?」「もももしかして、天変地異の前触れか!?」などと囁き合った。
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