ハーメルン
夜に太陽なんて必要ない
12 黒い紳士

すっかり暖かくなり学年末テストも終わって、私の気は緩んでいた。今年ももう終わる。色々あったからなのか、凄くあっという間に感じてもうすぐくる、物語の分岐点になる出来事も後2年後かと思うと、溜息が溢れた。

「溜息をつくと幸せが逃げるらしいよ」

横から聞こえた声の正体を見て、私はまた溜息が出そうになった。
ルシウスだ。

「そんなことで逃げる幸せなんていりません」

「あはは、君らしいね」

少し笑い声をあげながら、ルシウスは外を眺めている私の隣に立った。

「……こんな所に貴方が来るなんて、珍しいですね。」

「……そういう君も、こんな風通しの良い所嫌いそうじゃないか」

私達がいるところは、ホグワーツのすぐ隣にある崖に掛かっているすぐに崩れてしまいそうな橋。シェーマスが最後爆発する橋だ。
6月中盤にもなると、この風通しがいい所が丁度良くて私は、暖かくなると良くここに来ていた。

「何か……用ですか?」

私は、景色を見たまま尋ねてみた。


「……君は、セブルスのことが好きなんだね」


思ってもいなかったルシウスの言葉に驚いて私は、彼の顔を凝視した。

「…………えっ?…」

「あんなに、セブルスを目で追いかけているんだから流石の私でも気づいたよ。何だったらセブルスが気づかないのが不思議ぐらいだ。まぁ…彼もそういう事は鈍感だからね」

「……冷やかしに…きたのなら、早くお帰りください。」

私は、景色を見るようにルシウスから視線を逸らす。

「冷やかしに来たわけじゃないよ。……君に素敵な提案をしてあげようと思ってね」

明るかったルシウスの声が低くなったのを感じて、寒気が襲いかかってきた。

「………セブルスは、いずれ私達の仲間に入る。」

「何故…そう断言できるんですか?…」

「君だって分かっているだろう?彼は、明らかにこっち側の人間だ」

「………そうでしょうか?……私にはそう思えません。あんな優しい人は世界中どこを探してもいないと思いますよ」

ぴしゃりと言い切る私をみて、少し笑いをこぼしたルシウスの声が聞こえてきた。私は少し眉間にしわを寄せながら、彼に向き合う。

「何が、可笑しいんですか」

「確かに……君のいう通りかもしれないな。私よりも君の方がセブルスの事をよく見ているから」

自分の頰が熱くなるのを感じているとルシウスの声がまた低くなり、私は笑顔を浮かべながら話す彼を少し睨みながら耳を傾けた。

「でもね…彼はある人の為に振り向いてもらえるなら何だってするんだよ…分かるだろ?」

「…………エバンズ…」

本当にこの人は意地悪だ。わざと私に言わせて実感させようとしてくる。

「そう…リリー・エバンズ、………賢い君ならもう私が言いたい事は分かるだろ?」


私が何も答えずにいると、彼はニコリと笑って口を開いた。

「君はどう頑張っても彼女の代わりになる事なんて出来ない。………きっともうセブルスに振り向いてもら「分かってます!!!」

最後まで聞きたくなくて、私は声を張り上げ遮った。

「そんな事…貴方に言われなくても分かってます。……」

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