13 ブラック家
夏休みを迎えて、家に帰宅した私はだらだらと時間を過ごしていた。課題を終わらせながら、何故か今回も帰ってきていた兄の相手をし、ダイアゴン横丁に行った時は兄に本やお菓子、服など買ってもらい充実しすぎているほど毎日がそれなりに楽しかった。
何もすることがなくとりあえず本を読んでいたのだが、つまらなくなった私は本を閉じて机の上に置いた。あまりに乱暴に置いたものだから散らばっている机からいくつものコインが転がり、床に散らばった。
「…あーやっちゃった」
そのコインは何故か昨日父からお小遣いといわれて貰ったもので、何も袋にも入れられずに直接渡されたものだった。しまうのが面倒でそのまま出しっぱなしにしていたことをすっかり忘れていた。
私はコインを拾い上げて、机の上に積み重ねて置いていっていると突然ノックもせずに兄が入ってきて、驚いた私の手が積み重なっているコインに当たりまた床に散らばった。
私が何も言わずに入ってきた兄を睨み付けると兄は申し訳なさそうに謝ってくる。
「ごめんごめん」
「ノックもせずに妹の部屋に入ってくるなんてどういう神経をしているの?」
「早くレイラに見てほしくてさ。ほら見てよ、チョコでドラゴンを作ってみたんだ」
瞳をきらきらと輝かせている兄の手には、確かにドラゴンの形をしたチョコがまるで生きているかのように動いていた。
「あまりに暇でさ、蛙チョコを食べてたんだけど、そんな時に蛙の形があるんだったらドラゴンもできるんじゃないのかなーと思ってさ、試行錯誤してさっきできたんだ」
暇だからといって普通そんなことをするだろうか…
私に褒めてほしいのか期待しているような瞳で見つめてくる兄を横目にコインを拾い上げながら適当に言った。
「あーすごいね、天才なんじゃないのー」
誰が聞いても棒読みだと分かるのに、兄は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
………馬鹿なのかな…
口に出さなかっただけでも褒めてほしい。
「ほら、食べて感想聞かせてよ」
そう言いながら押しつけてくる兄からチョコを受け取って、口に運んだ。
感想って………チョコはチョコに決まってる
「どう?」
「………………美味しいよ…」
私の言葉を聞くと嬉しそうに笑って、コインを拾うのを手伝いだした。
「コインといえば…よく魔法かけて遊んだな〜」
何か思い出したように呟く兄の言葉を聞いて私は聞き返していた。
「何してたの?」
「変幻自在術だよ。手紙を送るのが面倒な時に便利なんだ。」
そう言いながら、机の上にコインを積み重ねてる兄は懐かしそうに何かを思い出している様子だった。
「やってみせてよ、それ」
「勿論、いいよ」
コインを2枚ほど手に取り、杖を取り出すと慣れた様子で軽く振る。1枚を私に渡してくると、兄はコインを握りしめるだけで何も話そうとしない。何をしているのと聞こうとすると、手の中にあるコインが熱くなり、手紙を読んでいるかのように頭の中に文章が浮かんできた。
〈レイラ、また2人で買い物に出掛けようね〉
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク