ハーメルン
夜に太陽なんて必要ない
17 泣き虫が2人


O.W.L試験が終わり、試験から解放された生徒達の喜びの声を聞いても私の気持ちが晴れることはなく、胸に穴が空いたような空虚感だけが残ったままだった。
あの後すぐにセブルスはグリフィンドールの寮の前で徹夜する勢いで彼女に謝りに行ったらしいが帰って来た様子から見る限りでは上手くいかなかったらしい。

あの出来事から普通だったはずの光景はもうとっくの昔のように感じるほどぱったりと見ることもなくなった。セブルスとエバンズが2人で楽しそうに話しながら廊下を歩く姿も、喧嘩をするセブルスとポッター達を止めに入るエバンズの姿も、まるで初めからそんな光景なんてなかったかのように、空気に溶けてしまったみたいだ。気づかないほど少しずつそれぞれの歯車がずれていっているような気がして、私は必死にそれらから目を逸らした。

もう2人で歩いている姿は見ずに済んだんだからと、いくら言い訳をしてもそれでも私はある光景を目にする度に胸が締め付けられるように苦しくなり、せめていられているような気がしていた。

セブルスは友達と話すエバンズとすれ違う度に足を止めて、楽しそうに話す彼女を目で追っている。少なくとも私が見た限りでは毎回必ず振り返っている。その度に私の胸はぎゅっと締め付けられて、彼女の後ろ姿を見えなくなるまで見つめ続けるセブルスを見ると、息ができなくなるほど苦しくなる。


悲しそうに、


辛そうに、


後悔しているように、


…愛しそうに見つめるセブルスの瞳も表情も何もかもを見ると、嫉妬していた時よりも悔しくなる。



…………振り返ってくれないと分かっているのに…セブルスはまだ……エバンズを想っていることに嫌というほど実感させられるから…



私には決して向けてくれない瞳で彼女を見る彼の姿を見るたびに胸が苦しくなり、想いが溢れ出てくる。


…あの時、せめてセブルスがエバンズのことを想い続けられるように、私はこの気持ちは絶対に彼に伝えないことを決めた。それなのに、行き場のなくなったこの感情は溢れて溜まっていくばかりで消えてくれないのだ。



私は時計の秒針が動く度にセブルスに恋をして、愛しく想う感情が深くなっているような、もう抜けられないほど依存してしまっているような気がしてならない。初めはとても綺麗なもののはずだったのに、今になってはこんなにも汚く、醜いものになってしまったように感じて怖かった。それでも微かに感じるあの温もりに一度触れたら忘れられないほど、幸せになる。


だから求めてしまう。


どうしても捨てられなくて、忘れたくないもの。

……どんなに届かないと分かっていても、それでも求めるぐらいは許してほしい…








エバンズとの仲が悪くなってしまうともう歯止めが効かなくなったように、セブルスは闇の魔術に没頭していっていた。…きっと彼は死喰い人になっても彼女が振り向いてくれないことなんて知らないし、今後も気づくことはないのだろう。それなのに、セブルスは、彼女がもう一度自分に振り向いてくれるのを信じて間違った方向へと進んでいた。私がどう声をかけてもきっと聞いてくれない。それなら、少しでも近い場所で彼を守り続けることしかできない。

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