20 ペンダントの秘密
結局私は、その後は特に何をすることもなく過ごしてしまった。
こればかりはしょうがないのだ。来年あるN.E.W.T試験に向けて毎日のように出された大量の課題に追われ、さらには姿くらましの試験にも備えないといけなくて、学校生活を送るだけで私は精一杯だった。
無事に姿くらましの試験に合格したと思えば、次は学期末試験が待っていたしもう気づいたらもう1年が過ぎていたといった感じだ。
言い訳にしか聞こえないが、もう過ぎてしまったものはしょうがない。
家に帰り着いたその日の夜は、風呂に入ったあとすぐに一年の疲れを癒すかのようにベッドに飛びこみ、寝ようかと瞼を下ろす。
……疲れた…
そう思いながら少しウトウトしだした時、部屋の扉を叩かれた音が聞こえて少し寝ぼけながら、戸を開けた。
「……お父さん…どうしたの…」
父が自ら私の所へ来るなど珍しくて、一気にぼんやりとしていた意識がはっきりする。
「…お疲れのところすまないね。…少しだけいいかな?」
「……あ…うんそれは別にいいけど」
私は少し戸惑いながら、父を部屋の中に入れて扉を閉めた。父は少し小さなソファーに腰掛け、私はその向かい側の1人掛けのソファーに座った。
「…それで一体どうしたの?」
父はどこか言いにくそうに私から視線を逸らして、ゆっくりと口を開いた。
「…少しアメリアに怒られてしまってね。……」
「……えっ?うん。それが何」
言っている意味が分からず私が冷たく返すと、父はまた話し出した。
「……レイラにペンダントを送ったということを知ったらしいんだ。」
その言葉に私は疑問しか浮かばなかった。
「どうしてそんなことでお父さんが怒られなければならないのよ。…
それにあのペンダントって随分前のクリスマスプレゼントじゃない。……それを何今更」
「…所有者以外には、単なる小物入れのペンダントにしか見えないからね……どこで気づいたかは知らないけど」
そう言う父は、溜息をついてぽつりぽつりと話し出した。
「……レイラにこのペンダントが役に立つ日が来るかもしれないと思って送ったんだけど…間違っていたかもな…」
見たことのない父の姿に不安を覚えたと同時に、何かペンダントについて隠してある事があると思って少し乗り出しながら問いかけた。
「……お父さん…このペンダントについて何か隠してある事があるの?」
父は私が手に持っているペンダントを見て、白状するかのようにぽつりぽつりと話し出す。
「…本当は……ペンダントを渡した後直ぐに言っとくべきだったんだろうけど、どうしても言える勇気がなかったんだ。」
痛々しく笑う父は、何か後悔しているような様子だった。
「…大丈夫よ。私はそんなに弱くないわ」
…私が弱くないわけがないが、こうでも言わないと言ってくれないような気がする。
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