ハーメルン
遥かな、夢の11Rを見るために
デビュー戦



 幾多の壮絶な坂路を越えて、いよいよ、私のデビュー戦の日を迎えた。

 身体に染み付いた坂路、そして、過酷な筋力トレーニングにつぐ筋力トレーニング。

 さらに加えて、遠山式の鬼の追い込みトレーニングをこなした私の身体は更に磨きがかかっていた。

 そして、パドックのステージに立った私は鍛え抜いた身体を皆に披露する。

 見世物みたいになるのは不本意だが、ウマ娘として、鍛え抜かれた身体を見たがるファンもいるのでそこは致し方ない。


「3枠3番、アフトクラトラス」


 アナウンスが流れ、それと同時に入場をはじめる私。

 見よ、民衆よ。私がしごきにしごかれて身体をいじめにいじめ抜いたこの身体を!

 多分、こなした坂路の数はここのレースに出てるどのウマ娘よりもこなしたと思う(震え声。

 すると、私の身体を見ていた観客からはこんな声がちらほらと上がり始めた。


「…おいおい、マジかよ…」
「一見スラっとしててグラマラスだと思ってたけど凄い身体ね…」
「あれヤベーって…、凄い引き締まってるし」


 まさかのドン引きである。

 大丈夫ですよ、私の太もも試しに触ってみてくださいモチモチしてますから。

 胸もぷよぷよしててかなり柔らかいですよ、胸は触ったら坂路で鍛えまくった時速160kmくらいの速さの豪脚で蹴り上げますけどね。

 どうやら、ウマ娘の場合は筋力を鍛えまくっても柔らかな柔軟性のある筋肉になるらしい。

 本来なら、多分、腹筋がバキバキに割れていて足の筋肉とか腕の筋肉とかボディビルダー並みにバッキバキになっていてもおかしくないトレーニング量を私はこなしてきた筈。

 そうなっていないのはウマ娘が普通の人間とは身体の構造が異なっているからだろう。

 その後、パドックを無事終えた私は誘導員さんと共にレース場にあるゲートへと向かう。

 早速、ゲートインをしはじめる私は拳と首の骨をバキバキと鳴らしながら中へと入っていく。

 隣で見ていたウマ娘達がやたらと血の気が引いて、怖がっているみたいだが、きっと気のせいだろう。

 はじめてのレースだし、気を楽にしてやるか。

 位置について! の号令とともに走る構えを取りはじめる周りのウマ娘達。

 私もそれとともにゆっくりと姿勢を低くして、クラウチングスタートの構えを取る。

 すると、観客席からは驚いたような声が次々と上がってきた。

 あれ? いや、陸上なら普通クラウチングスタートの構えを取るんじゃないのか?

 周りのウマ娘もゲート内で私が取る構えに目を丸くしていた。そして、いよいよ、発走の号令が掛かる。


「ヨーイ…! ドンッ!」


 その瞬間、目の前のゲートが私の目の前で勢いよくパンッ! と開いた。

 デビュー戦の距離は1600m、この距離ならスタートダッシュを決めて早めに先頭を取りいくのが吉だ。

 ウマ娘の中には関係なく、一気に後ろからぶっこ抜く豪脚のウマ娘もいるが、私はセオリー通りに今回は先頭を取りに行く!

 ゲートが開いたと同時に低い姿勢のまま一気に駆け出す私、すると、一気に先頭に踊り出ることになった。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析