第8話 男子より男らしいのは儚い?後編
「改めて瀬田薫(せた かおる)だ、よろしく頼むよ」
そう名乗って瀬田は右手を差し出してきた。
「…早川弘人だ、よろしく瀬田」
しっかりと手を握る。思ったより細い手だった。
「薫と呼んでくれ、私も弘人と呼ばせて貰うよ」
「分かったよ、薫」
俺らの様子を見て日菜は嬉しそうに言った。
「うんうん!るんってするよ~♪」
瀬田 薫か…
「ええっと…」
イケメンで背は高いな…
「すまないが…」
コイツ、男なのにまつ毛長いな…
「弘くん!!」
突然日菜が大声を出した。
「んっ?どうした?」
「いつまで薫くんの手を握ってるのー?」
「あ、スマン」
「か、構わないさ…」
あまり長くいると練習の邪魔だろう。
「日菜、そろそろ行くか」
「うん、薫くんまたねー!」
「ああ。またね、日菜」
「…。」
日菜の後をついて歩くと1つの部室に着いた。
日菜はくるっと回って俺の方を向くと言った。
「ようこそ!天文部へ!」
部室のなかは天体望遠鏡やら星座関連の資料がたくさんあった。
「まさか日菜の言ってた部活が天文部とは…」
「えへへ~驚いたー?」
「驚いたっつーか、意外というか…」
日菜は授業中、ぐでーとしているから天体観測とかそういった静かにやるものは苦手なイメージをもっていた。
「むー、弘くんアタシに失礼なこと考えてない?」
またバレた。
「え、なんで?」
「だって変な顔してたよー…」
変な顔は生まれつきだ、ほっとけ。
「なぁ日菜、天文部の先輩たちはいないのか?」
そう訊くと日菜は笑顔で言った。
「アタシだけだよー?それより、弘くんも天文部入るよね?」
「いや、待ってくれ、そもそも天文部って具体的に何するんだ?」
日菜は首を傾げながら言った。
「えーっとねー、星を見ることかなー?」
そりゃな?…こいつは天才だ。アホではないのだが…。
「あとは?」
「あとは入ってからのお楽しみ~!」
「よし、帰る」
「ま、待ってよー!」
日菜が俺の背中に抱きつく。
「おい!離れろ!」
「嫌ー!離れたら弘くん帰っちゃうでしょー!?」
いつもならなんら代わりのないやりとり。しかし今日はいつもとは違った。
…薫と日菜が楽しそうにしている様子が頭に浮かぶと気持ちがぐちゃぐちゃになっておかしくなった。
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