ハーメルン
天才少女に手を惹かれて
第8話 男子より男らしいのは儚い?後編







そして、頭に浮かんだのは1つの答え。





…そもそも日菜に好きな奴いるんだろ?





そう思うと自分でもゾッとするくらい冷たい声が出た。


「日菜、離れろ」


いきなり態度が変わったからか日菜がビクッとして離れた。


「…ひ、弘くん?」


後ろを向くと日菜は少し怯えた表情をしていた。


その表情を見て少し胸が痛くなったが冷えた感情は言葉を紡ぐのを止められなかった。


「…むやみやたらに抱きつくのは女子としてどうなんだ?」



「そ、それは弘くんだから…」


「どうだかな」


やめろ。


「現に好きな人いるのに他の男子に抱きついてるだろ?」


これ以上はいけない。


「す、好きな人なんてアタシには…」


「そうか」


何も言うんじゃない。



「弘くん、アタシ弘くんが嫌がることした?」



「…別に」



「じゃあ。なんで!」



言葉が――止まらない。




「…お前は俺の気持ちを何も分かってない、いつも振り回されてる俺の気持ちが分かるか?」


「ーっ!」


日菜は俯いてスカートの裾をぎゅっと握りしめた。



その様子を見て俺は我に返った。



「ひ、日菜…」



「…ないよ」



「日菜、俺は…」


日菜は顔を上げる。その瞳には涙が溜まっていた。



「ー他の人の気持ちなんてッ!アタシには昔から分からないよッ!!」


日菜はそう叫ぶと部室を飛び出して行った。



日菜が教室を飛び出すと部室には静寂が広がった。


人気が無くなった部室で壁を背に俺は床に沈むように座り込んだ。




思うことは後悔、自分への怒りと呆れ。



入学してすぐにできた居場所を、俺はこんなにも簡単に壊してしまったんだ。



無意識に力を込めて握りしめていた右手からは赤く血が滲んでいた。

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