16話 「むむ、姉さんは着痩せするのか」
何が起きたのかさっぱりだった。
覚えているのは、森宮が背中のでっかい奴を下ろして、剣を持って向かって来たこと。だから迎え撃つつもりで俺も走った。すると、あと数歩のところで、視界がピンク色に染まった。あとから思いだしたんだが、あれはセシリアの『ブルー・ティアーズ』が出すビームと同じ色だった。つまり、森宮を飲み込んだアレはでっかいビームだったってことか。自分だったらと思うと怖くてたまらない。
とにかく離れた。明らかに森宮を狙っていたから、次は俺かもしれない、そう思ったんだ。上を見て、いつでも避けれるようにって。でも、しばらく待っても何も無かった。代わりに観客席から誰かが入ってきた。
「一夏ぁ!」
どうやらあいつの知り合いらしい。専用機持ちであんな美人の知り合いがいるとか羨ましい……じゃなくて、何とかしないと。理由はさっぱりだが、先生たちは来れないみたいだから、助けが来るまで粘るか、倒すかしなければならない。とはいえ、俺は倒すつもりでいる。どのエネルギーも半分を切っているが、皆が避難する時間を稼がなければ。アリーナのシールドもシャッターもあのビームの前じゃ意味が無い。我儘な俺でも、こんな時ぐらいは人の為に動くさ。
でも1人じゃ多分無理だ。鈴に勝ったのだって殆ど偶然見たいなもんだったし、俺をいいようにしていた森宮でさえ気付くことができなかった相手だ。不可能に近い。
だから、途中で入ってきた女子に手伝ってもらおう。専用機持ちなら多分俺よりは強いだろうし、森宮のこと大事そうにしてたから、きっとあいつを倒すのに力を貸してくれる。
プライベート・チャネルを開こうとした時だった。
「じゃ、お先!」
そう言いながら森宮が飛び出していった。……ん? あいつ、さっき撃たれて無かったっけ? それに、『打鉄』じゃない? どうなってんだ。
「織斑秋介」
「!? えっと……もしかして、さっきアリーナに入ってきた人?」
「森宮蒼乃。一夏の姉」
「は?」
姉なんて居たのかよ。
「邪魔。ピットに下がって」
「何の話……って、聞くまでもないか。俺だってまだ戦えるし、時間稼がないといけないだろ? だったら、人数多い方が――」
「ウロチョロされるとこっちが困る。大人しく下がって」
「いやでも――」
「素人は邪魔と言ってる。それと、弟に近づかないで。それだけ」
「はぁ!? あ、おい、待てって!」
言いたいだけ言って、森宮の姉は飛んでいく……かと思いきや、アリーナの中心に向かって移動した。そこでISの何倍も大きな大剣を展開して、何も無い空間に振りおろし始めた。
何やってんだアイツ。そうやって森宮の姉を笑ったのは最初だけ。
大剣の軌道上に、さっきのビームを撃った奴が現れた。というか、上から飛んできた。その先には何故か復活している森宮。………お互いがどう動くのか、全部分かっていたみたいな動きだ。
森宮の姉は大剣をそのまま振りおろして、敵を真っ二つにした。そこへ追い打ちをかけるように、もう一度振りあげ、下半身の方をぶった切った。上半身の方は、どこからか――上空の森宮が狙撃銃らしきもので狙い撃った。弾は着弾と同時に爆発して、敵の身体をバラバラにしてしまった。
そう、バラバラに。ISを!
「おい! 何してるんだよ!」
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