ハーメルン
無能の烙印、森宮の使命(完結)
9話 「弟をバカにする奴は極刑」

「ISって奴は動きづらいな!」
《360度の視界に自由自在に動けるPIC、人間ではありえないブースター、そして間合い。生身の状態での経験値はそのまま活かせますが、ISを動かすにはISの経験が必要です。まずは慣れてください》
「一夏……慣れて」
「分かってるって!」

 『夜叉』と姉さんが同じことを言う。やっぱり慣れなのか? 実戦で最新兵器を使いこなせって言われた成りたての新兵ってこんな気持ちなんだろうな……。

 ハイパーセンサー、だったか? とにかくそれのおかげで出血しまくって見えにくい目でも避けられる。元々弾丸を見てから避けられる俺からすれば見えるだけで十分だってのに、ロックオン警報とか、弾道予測射線なんてものもあるから簡単に避けられる。

 が、動きづらい。走るだけでバランスが崩れて転びそうになる。そして、そのたびに狙われて姉さんがカバーに入る。これをひたすら繰り返していた。姉さんなら武装が無くてもあの敵には勝てる、だが、俺のカバーに入らなければいけない為、敵に近づけずにいた。助けに来たはずの俺は思いっきり足を引っ張ってた。

 情けない。だが、俺に出来るのは慣れることだけ。とにかく動いて避けてISに慣れるんだ。

《大分良くなってきましたね。マスターは身体で覚えるタイプですか?》
(昔色々とあってな、身体を動かす事なら多少の自信がある。ISが座学じゃなくて良かった……)
《おや、勘違いをなさっているようですね。ISは最先端科学の結晶、その技術は日用品、家電、雑貨に至るまで応用されているのです。科学には座学が付き物ですよ》
(マジかよ……)
《ふぁいとっ、おー♪》

 お茶目で騒がしい奴だ……。俺にしか聞こえないからっておちょくりやがって……。

 それは置いといて、だ。歩く、走るには結構慣れた。地上なら生身同様複雑な動きができるだろう。流石に同じぐらい動けるとは思えないが、整備されずにほったらかしだった『夜叉』が俺の動きについてこれるとは思えないし。

《確かに私はさっきまでスクラップでしたが、ISの頑丈さをバカにしてはいけませんよ》
(俺の最高速度は秒速340m……つまり音速だって言ってもか?)
《………マスターは本当に人間ですか?》
(人間は辞めたって言ったろ)

 というか今でさえちょっとぎこちないところがある、これ以上の速度は出せない。走る動きで精一杯なら、恐らく殴る蹴るも無理だろう。大人しく的になれってことか。

「ちょこまかとうざってぇな! いい加減当たりやがれ!」
「誰が!」

 姉さんと一定の距離を保ちながら俺に向かって弾をばら撒いてくる。悪いが地上戦は得意なんだ、当たりはしねぇよ、なんせ見えるんだからな。俺に当てたかったらレールガンでも持って来やがれ。

 ブースターをとPICを使った動きにも大分慣れてきた。地上を滑空して、直角に曲がったり、宙返りしたりと、直線的な動きもいい感じになってるだろう。

「クソ……ISが男に乗ってるってだけでもありえないってのに、こいつの動き素人とは思えねぇ……たった数分で代表候補クラスになったってのかよ!? “無能”ってやつじゃねえのか!?」
「誰もが勘違いしている。私ばかり持て囃してちやほやする。そして、一夏には侮辱と下劣な言葉ばかり。違う。一夏は私と同じ。私が“神子”なら一夏だって“神子”」

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