第三話 闇からの脱出(前編)
――2022年7月11日 関東郊外 EDF第228駐屯基地 地下格納庫――
「なんという大きさだ……」
私は武器庫から銃と弾薬を取得し、今は巨大過ぎる物体を見ていた。
ちなみに幸いにしてあれから巨大生物と遭遇することは無かった。
そして目的地へと辿り着いたのだが……。
「軍曹、どうです?」
「ダメのようだ。非常用の電源ではこのリフトを動かす程の電力が不足しているらしい」
「ちっくしょう! この鉄屑用のリフトが動けば、地上まで一直線だったってのによ! ちっとは役に立ちやがれってんだ!」
馬場伍長が“鉄屑”を蹴る。
この通り、どうやら脱出まではまだ掛かりそうだ。
残念。
「超大型多目的建設用人型重機バルガ。生で見るのは初めてだろ?」
青木が同じくバルガを見上げながら言う。
「そうだな。ニュースでの映像とは迫力がまるで違う」
ニュース。そう、この超大型重機は、日本を震撼させたある事故であまりにも有名だ。
――――
桜獄山噴火災害救助事故。
2020年9月23日、鹿児島県桜嶽火山が噴火。
火砕流が残り数時間で人口密集地を直撃するとの予測が建てられたが、避難は間に合わず、大量の犠牲者が予想される緊急事態が起きた。
政府の災害対策本部はなんとか火砕流の進行を遅らせられないか頭を捻らせたが、とても打開できそうな案は生まれない。
そんな中閃いたのは、当時鹿児島で初稼働予定だったバルガを使って火山の岩盤を砕き、火砕流の進路を変えるという案だった。
バルガを所有する大手建設会社は、バルガのこれ以上ないパフォーマンスになると喜び、速攻で引き受けた。
超大型多目的建設用人型重機バルガ。
これは日本の大手ゼネコン連盟と日本政府が共同で企画している、大規模独立機能都市建造プロジェクトの一環で製造された建設重機だ。
深刻化してきたエネルギー問題や人口過密問題を解決するため、海上都市や空中都市、地下都市や火山都市など、自然エネルギーを利用して一つの都市を独立して機能させるプロジェクトだ。
それぞれ波力発電、風力発電、地下水脈を使った水力発電、マグマの地熱発電。
そして一つの都市として隔離・独立させることで災害への対策も容易とし、住民の数を絞ることで避難もその教育も万全に行きわたらせることが目的の実験都市だった。
その建造に当たり、重機を巨大化させることによって効率化を図ろうと考えて製造されたのがバルガだ。
両腕部は必要に応じて数十のユニットに換装可能で、表層はE1合金と呼ばれる特殊合金で出来ている。
極地での大規模建造をコンセプトとするバルガは、落石落盤は物ともせず、超高温の溶岩や絶対零度に近い低温まで耐えるだけでなく、強酸や化学物質、さらに放射能まで遮断する気密性を持つよう設計された。
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