第四話 闇からの脱出(後編)
――2022年7月11日 第228駐屯基地 地下設備 side:仙崎誠――
我々は2輛の戦車で地下施設車両用通路を移動していた。
移動は順調で、途中遭遇したはぐれの巨大生物数体を難なく撃破し、このままいけば後数ブロックで出口のところまで移動する事が出来ていた。
ただし、それはほんの数分前までの話だった。
「馬場! 無茶するな! 戦車の陰に隠れるんだ!!」
青木が身を隠しながら馬場に言う。
「わァーッてるッ! トドメだ喰らえッ!」
馬場がグレネードを投げる。
爆風や破片で3体程倒したか。
その反撃として馬場に飛んできたのは、彼奴らの吐き出す強力な酸だった。
「あぶね!」
間一髪身を隠した馬場だったが、盾となった戦車の装甲は恐ろしい勢いで溶けていった。
「なんてこった! 戦車の装甲がクリームみたいに溶けやがる!!」
「巨大生物が吐き出しているのは、強力な酸だ! 仙崎! アーマースーツがあってもやばいんだ! 生身のお前が当たれば一瞬で溶かされるぞ!!」
青木の左腕はアーマーが黒く焦げたような跡が残っている。
アーマーを着ていてそれなのだ。
生身で当たっていれば腕が無くなるであろうことは想像に難くない。
「承知しているっ! だが銃弾のような速度ではない、見ていれば躱せる!」
問題はここが通路上であり、躱せる範囲も少ない事だ。
なので我々は、酸まみれになり只の鉄塊となり果てた戦車を盾に防戦を演じている。
その戦車だが、車両用の広い通路とは言え二輛並んで走るのがやっとという広さの通路では、回避もままならない。
尤も、戦車砲の威力は十分で、放たれた高速徹甲弾は巨大生物を何体も貫通する圧倒的な火力を見せつけたが、反撃となる酸のショットガンを前に成すすべもなく攻撃不能に陥り、鉄の棺桶に入ったまま全身がクリーム状になる変死を遂げる前に脱出した。
そう、巨大生物は、腹部から強酸性の体液を噴出させるのだ。
戦車という鋼鉄の兵器が登場したことでその攻撃を行ったのか、もしくは種類が違うのか判断はできないが、とにかく奴らは腹部を下向きに振り下げて、戦車の装甲も一瞬で溶かす強酸を噴出する。
救いなのは予備動作が大きく、酸は放射状に飛ぶが発射数はそれ程多くないため、距離を詰めれば躱すことが出来るという事だ。
「くそう、出口はもうすぐそこなのに!」
千島が一体一体巨大生物を仕留める。
だが奴らはその死体を押しのけ、乗り越えながら無数に湧き出てくる。
「だああ! ここは怪物の国か! 今更だが、こんな怪物と戦うことになるとは思わなかったぜクソ野郎!」
馬場が途中の弾薬庫で補充した弾倉をAS-18Rへ装填する。
大型の弾倉と連射力に優れるRモデルだが、初速が遅く弾丸も小さいため、威力には劣るという話だ。
「まったくだ! まさか自分の基地で遭難する事になるとはな! おい馬場! 手榴弾はもうないのか?」
青木の言うようにこの状況、まさに遭難と言って差し支えないようだった。
この地下倉庫は災害時や有事の際のシェルターとしての機能を優先したためか、各ブロックが車両用通路でつながっており、隔壁を下げることによって各個が独立したシェルターと化す。
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