ハーメルン
漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! (通称:モモです!)
3章 ナザリック 襲撃編-終

 うずうず。うずうず。こう、なんというか、うずうずする。とでも言えば良いのだろうか。何をうずうずしているのか、それは理解している。
 先ほどから──玉座から立ち上がろうか、どうしようかと腰を浮かせたり座り直したりと妙な動きになってしまっている。

「なぁ、アルベド──」
「なりません」

 隣に立つ階層守護者統括のアルベドに話掛けるも、にべもなく断られる。その笑顔は何時ものように眩しい限りなのだが、その目は確固とした信念がありありと浮かんでいた。お前の意見は絶対に通さないぞ、という信念が。

「な、なぁ──ちょっとだけ、な?」
「いけません」

 傍から見れば玉座に大仰に座る主とその従者なのだが、会話だけ聞けば情けない事この上ない状態だ。まるで尻に敷かれた旦那である。いや、まるで──ではなくそのまま、か。

「ちょっとくらい良いじゃないか」
「いけませんと──先ほどから申しているではありませんか」

 俺が食い下がるのも仕方ない事だと受け入れてほしいが、そうままならない。
 何せ暇なのだ。早朝から行われている襲撃から早数日と数時間。もう残るは後10人にも満たないだろう。弱い。そう、想定以上に弱すぎたのだ。だからこっそりと、分かり辛いように折角作ったこの玉座の間への直行テレポーターも結局見付けられる事もなく。──いや、そもそもそのテレポーターまで来れた襲撃者すら皆無。
 全体の凡そ90%の襲撃者が、だ。このナザリック地下大墳墓の第一階層どころか、一階すら踏破出来ないなど誰が予想できるだろうか。余りに酷すぎて別の階層にランダムで飛ぶテレポーターの設置まで行ってしまう程だった。だがそれは階層守護者達を喜ばせただけならば良かったものの──

「今回の襲撃は余りに弱すぎて、防衛を行った者達から少なからず不満の声が上がっております。そんな状態でアインズ様に暴れ回られでもしたら──」
「不満が爆発する──か」
「いえ、皆の標的が襲撃者からアインズ様に代わるだけですわ」

 なにそれ怖い。本気<ガチ>モードのコキュートスが嬉々とした表情で俺に突っ込んでくるとか恐怖しか湧いてこないぞ。死ぬかもしれないという恐怖ではなく、終わりの見えない凄まじく面倒臭い方でだが。

「アルベド、あとどれくらいで終わりそうだ」
「えぇと──はい、今終わりました。パルパトラという老人が主体となったチームが最後まで残っていたようですね。最終撃破者<ラストアタック>はアウラとマーレのようです」

 そうか、と呟く。終わった。そう、終わってしまった。楽しい楽しい祭りが終わってしまったのだ。一切参加する事なく。
 嗚呼。そうため息が出る。視線の端に見えた遠隔視の鏡<ミラー・オブ・リモート・ビューイング>にマーレとニニャが嬉しそうにハイタッチしている姿が映し出されていた。
 まるで──帰るまで楽しみにしていた新作ゲームを、先に帰っていた家族に先にプレイされていた気分である。楽しそうにしている所を見てしまっては怒るに怒れず、落ち込むことすらできない。

「少し出る。後は任せた」
「いってらっしゃいませ、アインズ様」

 あぁ、参加出来ない祭りに価値はあるのだろうか。
 ──こうして、楽しい楽しい襲撃祭りは密かに涙する俺を置いたまま終わりを告げたのだった。




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