ハーメルン
漆黒の英雄モモン様は王国の英雄なんです! (通称:モモです!)
7章 王国 七罪 ─Jaldabaoth─ 8
レエブン。その血の力はありとあらゆる奇跡を生み出すという。その直系の祖先にあたるアルベドという者の力は筆舌しがたいものであった。
「なんと──なんという──」
言葉にならない。アルベドなる者が生み出した魔法陣は黄金に輝き、まるで太陽の如く明るく眩しい輝きを放っていた。
中で何が起きているのかは分からない。しかし、不思議と恐怖を感じない。どちらかといえば、安らぎを感じるような温かい光なのだ。そう、それは例えるならば──
「女神の奇跡──」
そう、女神だ。
聞こえてきた方を見やる。彼女の背に生えた黒き翼が純白となり、死に瀕する英雄を包んだ。まるで伝承のような出来事が起きて思わず呟いてしまったのだろう。法国の神官長が驚愕のあまり目を見開きながら凝視している。
視線を戻せばゆっくりと光は弱くなってきている。少しづつ見えてくる二人の影。そこには、嘆く女性と倒れ伏す男性の姿はなく。
「あぁっ──モモンガさまっ!!」
己が起こした奇跡に喜び涙する女性と──
「姫──」
その女性を守るが如く、巨悪の前に立つ男性が居たのだ。
「あぁ、我が君。我が愛しきお方。生きていらっしゃったのですね」
「暗く深き闇の中にて、心と魂を削られながら。貴方の声が聞こえた」
そこに立つ男性──漆黒の英雄モモン。そこに禍々しき姿はもうない。その姿はかつて王都でヤルダバオトと戦った時と同じ。黒き英雄の姿があった。
暴走している様子はない。ただ──静かに構え、悪に──ヤルダバオトに対峙するのみ。
「奇跡──奇跡キセキきSekI!奇跡だと!ありえぬ!奇跡など起こりはしない!!」
「その通りだ、ヤルダバオト。奇跡は起こりなどしない」
ヤルダバオトは気づいたのだろう。漆黒の英雄がかつて王都で会った時よりも、ずっと強くなっていることに。
モモンがゆっくりとヤルダバオトに向け、歩いていく。先ほど受けたダメージなど無かったかのように、悠然と。
両手に持つ愛用の二本のグレートソードを背に仕舞い、どこからともなく一本の巨剣を取り出した。黒き炎に包まれた巨剣を。それを構えるでもなく、片手で持ちながら歩いていく。
「ならば何故貴様は立っている!混沌なる意識に飲まれ、魂を打ち砕かれんとしていた貴様がなぜ!奇跡など起きぬはずだというのに!」
「奇跡は起きない。それは確かだ。幾百幾千。幾万幾億祈ろうとも」
歩みが止まる。まるで風の様に、揺らぎ構える。その姿に欠片ほどの隙も無い。
対するヤルバダオトはどうだ。先ほどまでの余裕などまるで夢だったかのように。
「なぜだ──なぜだぁっ!!」
「とても簡単なことだ、デ──デーモンよ。奇跡は起きない。奇跡は──起こすものだ!!」
まるで限界まで引き絞られた弓より放たれる矢の如く、英雄は一気に間合いを詰めていく。悪魔もそれをさせぬと構えようとするが、遅い。
「ガッ──ガァァァァァー!!!」
「武技──極光連斬」
まるで光になったかの如く一瞬でヤルダバオト近付き、そのまま貫いたのである。
「──見えたか、ガゼフ」
「3回までは、な。恐らく私の六光連斬の様に同時に幾つもの連撃を行うものだと思うが」
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