2日目 -月夜に咲く- (後編)
日が西に傾き始めた頃、屋台も始まった。屋台はというと「みすちーの美味しいワラスボ(鰻に似た禍々しい生き物で、有明海に生息する珍魚)の蒲焼き」「こころのお面」「アリスの人形劇場」「守矢神社の輪投げ大会」「河城にとりの新作メカ」「霧雨魔法店の新薬」「妹紅の焼き鳥」「風見花店」「旧地獄&妖怪の山のコラボお化け屋敷」と多種多様である。
もはや縁日ではなく学校の文化祭だ。
「遅いな、二人とも。」
俺は鳥居にもたれかかって幽々子さんと妖夢さんが来るのを待っていた。夕方には来る、とは言っていたが、二人ともなかなか現れない。
「どうもー!」
突然後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、黒髪に白いシャツ、そして背中に立派なカラスの羽みたいなのをつけた少女、そうだ、途中から手伝いに来ていた妖怪…射命丸文さんだった。
「ああ、たしか文さん…でしたっけ。」
「あ、はい!〇〇さんでしたよね、こんな所で何してるんですか?」
「何って、幽々子さんと妖夢さん待ちですよ。そろそろ来るとは思うんですけどね。」
「なるほど〜」
にやにやしながら俺の顔をのぞきこんだ。
「…なんですかその目は。」
「いや〜、いいですねぇ、お似合いだと思いますよ〜?」
「…な、なんの話ですか。」
「決まってるじゃないですか、貴方と妖夢さんですよ。さっきまで手伝いをしていた妖怪の中でも、あの二人いい雰囲気だって話で持ちきりですよ?」
「ええ…」
「で、ズバリ〇〇さんは、妖夢さんのことをどう思ってるんですか?」
ブルータス、お前もか。
「そ、そんなこと言えるわけないでしょう!」
「大丈夫!今なら誰も聞いていませんよ?それに私、口はかたい方ですから!」
「…。」
いかにも口が軽そうなヤツだが、信用していいのだろうか。
「そりゃあ、可愛くてしっかりしてて料理や家事もそつなくこなせて、剣術の修行までしてて、立ち振る舞いも立派で素晴らしい人ですけど…僕みたいなパッとしないヤツなんかとはつり合わないですよ。妖夢さんも僕なんか眼中にないでしょうし。」
「ていっ!」
「いてっ」
デコピンを食らった。
「まったく…ダメですねえ。つり合うとかそういうのじゃなくて、〇〇さんがどう思ってるのか聞いてるんですよ。それに見た感じ妖夢さん、別に〇〇さんの事まんざらでもなさそうですよ?」
「…え?」
「だってあの人普段あんなに笑いませんから。〇〇さんは知らないでしょうけど、妖夢さんって滅多に笑顔見せないんですよ?それが〇〇さんと居るときはあんなに楽しそうに。ええ、貴方と一緒に居る時が一番楽しそうですね。」
「そうなんですか…」
意外だった。
「ま、端的に言えばおそらく妖夢さんは貴方の事を…おっと、そろそろ待ち人が来る頃ですね。では私はこれで。」
それだけ言うと文さんは屋台の方へ走っていった。
「〇〇君〜!」
向こうの方から誰かが俺を呼んでいる。声のする方を見ると幽々子さんに…浴衣姿の妖夢さんだった。
「ごめん、待ったかしら?」
「〇〇さん、お待たせしました。」
「…いえ…全然……待って…ない…です…」
妖夢さんの浴衣姿に言葉を失った。しかも後ろ髪を結んでる。そして黒のリボンの代わりに花をかたどった髪飾り。この素晴らしさは日本語では表現不可能だ。
「あの…私の浴衣姿…やはり変でしょうか…?」
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