ハーメルン
四肢人類の悩み【完結】
11話 馬に乗ってなくても流鏑馬って言うんだって

 秋である。嫁が茄子を食えなくなる季節である。そして秋と言えば、流鏑馬(やぶさめ)である。実は秋に限った事ではないのだが、秋に執り行う事が多い。

 それはこの六肢人類の世界でも変わらないのだが、変わった事が一つ。この世界の流鏑馬は、主に人馬が行うものなのだ。

 君原もまた流鏑馬を嗜んでおり、今日はいつものメンバーでその見学に来ている。一頻り見た後、師範に普通の弓道をやってみないかと誘われたため移動したのだが。

「二人とも……マジ?」

「ぬっ……ぐぬぬぬ……!」

「重い……ですね」

 名楽とサスサススールの二人は、弓を引くだけで精一杯のようだ。弓を保持している腕がぷるぷると震えている。生まれたての子馬よりも震えている。

「いくらなんでもこれは……」

「ワタシぁつくりが繊細なんだよ」

「南極人の通常種にあまり力はないんです」

「体育の授業で体力ないのは知ってたけど、だからってここまでとは思わなかったわ。それに比べてあっちは――――」

 横に視線をずらす。そこでは獄楽が、的の中心にばすばすと当てまくっていた。

「いや、あのスポーツ万能と一緒にされても困る」

「弓を引くのは初めてという話でしたが、希さんは凄いのですね」

「肉体面での天才ね」

 見本として師範の射を一度見ただけのはずだが、あっという間にそれを自分のものにしてしまった。師範は人馬で体格もかなり違うのに、である。まさに天才としか言いようがない。

「あの子ホント凄いわね……」

「師範の目から見ても?」

「そりゃあね。普通は弓を持たせるまででも二ヶ月くらいはかかるもんだけど、あの子なら明日からエースで活躍できそうよ」

 感嘆の中に呆れを織り交ぜ、師範がお墨付きを出す。プロの目から見てもやはり凄いようだ。

「そういう菖蒲はどうなんだよ」

「私? そうねえ――」

 前に出て、先程の師範の動きを再現していく。
 いわゆる『射法八節』だ。

 一、足踏(あしぶ)
 的を見ながら左足を半歩踏み出し、右足を一度左足に引き付け、逆方向に扇形に開く。両親指を結んだ線上に的の中心が来るように、足の延長線上で作る三角形が60度になるように。
 尤も手本は馬の足だったので、師範に聞いてあっさり再現した獄楽の動きを真似している。

 二、胴作(どうづく)
 弓を左膝に、右手は右腰に。勘違いされがちだが、和弓を持つ位置は中心ではなくそのかなり下だ。大雑把だが下から三分の一より少し上の場所だろうか。中心を持つのは西洋のアーチェリーである。

 三、弓構(ゆがま)
 右手を弦にかけ、左手を整え、的を見る。『大木を抱えるような気持ちで』とよく言われる。

 四、打起(うちおこ)

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