ハーメルン
異世界に転移したらユグドラシルだった件
#17 かぜっち旋風!

 秋の涼やかな風が吹き抜け、空には気持ちの良い青空が拡がっている。太陽は高い位置で眩しく輝いていた。

 魔物の国(テンペスト)の闘技場には特設ステージが設営されており、ステージの様子は巨大モニターに映し出される。
 備え付けの観覧席には、近隣の一般市民から、各国の重鎮達まで幅広い立場の者が集っていた。改装のために現在は一時閉鎖されている迷宮に挑戦していた者達もおり、種族も人間に限らずゴブリンや獣人属達が分け隔てなく隣り合って座っている。席の通路を飲食物を売り歩く売り子達の姿も見られる。
 ステージ前には特別招待枠の為の一等席が設置されており、そこには各学園都市の学生をはじめとした若者達が座っていた。

 大魔王リムルが迷宮のリニューアルと共に、新たな文化を発信するとに大々的に発表した。それを知って集まった人々で一万人入る大会場は既に超満員となっている。
「異世界の素晴らしい文化を再現し、発信する」という謳い文句以外、具体的に何を催すのかは明らかにされていなかった。
 ステージ上にはマイクスタンド、キーボード、ドラムセット、大きな箱状の────会場内にも、あちらこちらに大小様々な────スピーカーが設置されている。だが、それらが何であるか知る者はこの中では極僅かだ。事前に知らされていた各国の重鎮達と、元々その文化を知っている異世界人だけだろう。
 坂口日向(ヒナタ サカグチ)もその数少ない一人だ。

(どうもライブ会場みたいな雰囲気だけど、本気でやる気なの?機材は揃っているようね。でも、「歌い手」と「曲」はどうするのかしら……?リムル()の事だから、なんとかしてしまいそうだけど……)

 食事、移動手段、通信手段、風呂、トイレ────これまでも多くの異世界人達が再現を試み、普及させようと苦心してきたが、その殆ど満足できる水準で再現できていなかった。
 文明の未発達なこの世界では従来の異世界とは違う。まともな設備や物資も無ければ、技術も人員もない。そんな無い無いづくしの環境で、異世界文化を再現することが如何に大変であるか、異世界人の誰もが一度は痛感しているだろう。

 しかし、それをあの大魔王は事も無げに、驚くべき水準で次々と再現してきたのだ。
 日本(異世界)の人間だった彼は、前世(人間)の記憶を持ったままスライムとして異世界(この世界)に転生してきた。魔物達を纏めて町を作り、配下の魔物や周りの国をも巻き込んであらゆる発展を急速に実現してきた。今回もおそらく、本当に実現してしまうのだろう。

 会場に居る誰もが、期待の面持ちでその始まりを今か今かと待ちわびている。そして視線は自然と、専用席に座るリムルに集まっていた。

「大魔王リムル陛下より、ご挨拶があります」

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