ハーメルン
異世界に転移したらユグドラシルだった件
#19 迷宮攻略

 モモンガ達が迷宮に挑み始めて四日目。
 彼らが挑戦しているのは中級ランク。()()()の雪辱を果たし、笑った奴らを見返してやろうと、気合い十分だった。

 ライブで一躍有名になったかぜっちが今度は迷宮に挑戦するとあって、報道各紙がこぞって取り上げたことで、世間の注目度は高い。リニューアルしたこと自体よりも、彼女に対する注目であるが。断りを入れてから、彼らの攻略の様子を大モニターに映し出しているのだが、これがかなり好評だった。

 挑戦者だけでなく、ただの野次馬達の割合も多いのだが、それはそれ。人が集まれば、それだけでお金が回るというものだ。

 モモンガ達の攻略ペースはかなり早い。迷宮の改装を手伝い、多くのギミックを熟知しているのだから当然と言えば当然か。ペロロンチーノが数々の罠を探知し、(と言うか覚えているようだが)かぜっちが精霊を使役して最短ルートを導き出す。

 戦闘も上々の出来だ。ひと月前に初めての迷宮で為す術もなく敗北した、あの魔物に初っぱなから遭遇したのだが、今回は落ち着いて対処出来ていた。
 ペロロンチーノが先頭で魔物の気配を鋭く察知し、弓による先制の遠距離攻撃を仕掛ける。矢は正確に魔物の右目を捉え、視界の半分を奪う事に成功。魔物がいきり立って突進して来るが、その頃にはかぜっちがバフをかけ終わっており、前衛のたっちとウルベルトがペロロンチーノと入れ替わる。以前とは全てが違った。

 たっちが正面から前足の攻撃を受け止め、膠着したその隙に死角からウルベルトが後ろ足を切りつける。魔物は反射的に前足を振り回すが、既にウルベルトはそこにはいない。
 反撃が空振り、勢い余って体勢を崩したところへ、かぜっちが"蔓棘束縛(ソーンバインド)"で動きを止める。最後はたっちの剛撃が頭に命中し、魔物は倒された。
 後衛のモモンガは止めの魔法を放つべく杖を構えて居たのだが、先に決着してしまい、少し残念そうにしている。
 ユグドラシルの時とはまるで違う役割の者も居るが、誰がどう動くのか、言葉を交わさずとも分かっているようだ。
 魔物達も連携を取り、集団戦をするようになってきているのだが、彼らの連携の前ではお粗末と言わざるを得ない。彼らは最下層手前で隠し扉を発見し、宿に入った。今日はここで休むらしい。

「さて……明日が楽しみだな」

 モモンガ達の様子を管制室(モニタールーム)で見守っていた俺は明日の準備のために部屋を後にした。






 19階層。モモンガ達はついに最下層手前までやって来た。皆多少の疲労はあるが、攻略に何ら差し支えはない。隠し扉の宿屋を見つけて、今は食後の一息をついている。

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