#4 ナザリックでの日常
「ホント、よくできてるわよねぇ」
「でしょ?ちょっと食い意地張ってるけど」
リムルは女性ギルドメンバーのやまいことぶくぶく茶釜の女子会に連れられて来ていた。やまいこは脳筋先生と呼ばれている。女性にとっては不名誉な渾名だが、「相手の情報を覚えてないから取り敢えず殴ってみよう」というまさに脳筋スタイルなので仕方がないか。神経も図太いらしいし。現実では教師をしているという。教師がそんなんで大丈夫なんだろうかと思わなくはないが、俺が教わるわけではないし、突っ込まずにおこう。
ぶくぶく茶釜は見た目どおりというか、陰で「ピンクの肉棒」とか言われているようだ。本人はその外見の卑猥さを自覚していないのか「キモカワでしょ」と堂々とした態度である。いくらなんでも女子でその外見はないだろう。誰か突っ込んでやれよと思ったが、男性陣にそんな勇者は居ない。一部の間では、きっと引くに引けなかったんだろうとまことしやかに噂されている。
当初は正体不明のNPCということで誰もが警戒(一部逆にこっちが警戒する相手がいたが)して、おっかなびっくりな対応だったのだが、ペロロンチーノとぶくぶく茶釜、そしてモモンガの取り成しで徐々にみんなに打ち解けていった。
先の二人は、なんというか、危険な香りが漂っていたが、モモンガは懐かれたと勘違いしているせいか、何かと気遣ってくれている。拾ったペットに対する責任感みたいなものか。いいヤツだな、ホント。普段前に出るタイプではないが、ギルド長らしく、締めるべきところはしっかりと締めている。もっと自分に自信もってもいいと思うけどな。まあ、その謙虚さが魅力でもあるのだが。
ディアブロはやはりというか、女性メンバーの人気を博し、モデルのようにいろんな服を着せられたり、あれこれポーズを取らされたりしていた。
最初は不満げな顔だったが、俺が誉めてやったら上機嫌でリクエストに答えていた。俺もピンクの肉棒に散々着せ替え人形にさせられたので道連れにしたわけではない。決して。
そしてウルベルトからの評価も高かった。彼は「悪」にこだわりがあるらしく、ディアブロの悪魔的(悪魔なんだが)嗜好は高評価だった。
「フハハ、なるほど。それは面白い。気に入ったよ」
「クフフフ、貴方もなかなかどうして、勉強になります」
先に言っておくが、この女子会の俺の目的は会話ではない。正直、女子の会話になんてマトモについて行けない。俺の目当ては女子の集まりと言えば付き物のアレ。そう、ケーキだ!
ゲームの中なので、プレイヤーには味や香りはわからないし腹も満たされないが、俺はリアルな質感と香りと味を堪能できる。ナザリックの食べ物はとにかく美味かった。シュナの作るケーキが新進気鋭の新作ケーキなら、ナザリックのケーキは伝統と格式のある高級ホテルで出るそれだ。
以前食堂に顔を出して食事を取ってみたり、ナザリックの素材を使って勝手に料理に挑戦(もちろん自分で食べるため)してみたりもしたのだが、後で素材が不自然に減っていることが発覚し、「それでしたら……」とディアブロがうっかり口を滑らしたおかげで、叱られる羽目になったのだ。あの時は流石に焦った。追い出されるかと思ったぜ。
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