ハーメルン
異世界に転移したらユグドラシルだった件
#5 大侵攻

「「「「「2000!?」」」」」

「マジかよ?」

「概算だがね」

「2ch連合が動いたか」

「全員100LVじゃないにしても数が多すぎる」


 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点『ナザリック地下大墳墓』────

 円卓の間にはギルドメンバー37人が集まっていた。

 2ch連合を始め複数のギルドが徒党を組み、『アインズ・ウール・ゴウン』に宣戦布告してきた事を受け、対策を練るためにモモンガが緊急召集を呼びかけたのだ。
 中には貴重な有給を使ってまで召集に応じたメンバーもいる。

 異形種ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』はこれまでにも数度侵攻を受け、その悉くを撃退してきた。だが今回は規模が違う。

 ぷにっと萌えと死獣天朱雀の情報によれば、敵総数は2500名。一つのギルド攻略に対して、過去類を見ない大連合だった。

『アインズ・ウール・ゴウン』結成のきっかけは、ただ人間種でないからと、それだけで差別を受けPKされてきた異形種プレイヤーを護りたかったから。そして何より、不当な差別を強いる者達が許せなかったからだ。

 しかし、そんな『アインズ・ウール・ゴウン』にPKされたことで逆に目の敵にする連中もいた。今回はそんな連中の呼び掛けで、上位ギルドに一泡ふかせてやろうと思っていた連中が動きだし、徒党を組んで押し寄せてきたのだ。

 人間種プレイヤー2000人を迎え撃つのは異形種プレイヤーたったの41人のギルド。圧倒的な戦力差に、沈痛な空気が流れている。無理もない。単純に50倍の敵が押し寄せてくるのだ。楽観などできようはずもない。

 その空気を破ったのは彼だった。

「我々『アインズ・ウール・ゴウン』は!不当な数の暴力に絶対に屈しない!」

 たっち・みーが吠えた。普段そんな事を滅多に言わない彼の咆哮に皆驚いた。

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の前身、クラン『9人の自殺点(ナインズ・オウンゴール)』。そのリーダーを勤めていた彼は、誰よりも正義感が強かった。しかし、現実(リアル)では警察官(勝ち組)として働きながらも、立場に縛られ信念を貫き通せない、一つの歯車にすぎない自分の無力さに忸怩たる想いを抱えていた。ならばせめてゲームの世界では己の正義を貫きたい────そういった想いから、彼は一方的にPKされて苦しむ異形種プレイヤーを放ってなど置けなかった。

「困っている人を見たら助けるのは当たり前」

 この誰もが分かっていながら、知っていながら行動に出来ない「当たり前」を本当に「当たり前」の世界にするために。

 そんな彼に救われたメンバーは少なくない。ギルド長モモンガもその一人だった。

「そうです。地の利は守る此方にある。烏合の衆に負ける気はしませんね」

「正義を騙る悪には更なる悪でもって叩き潰す!」

「燃えてきたー!」

「侍とは死ぬことと見つけたり、か」

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