第17話 決闘クラブ
あの一件以降、ミラベルとイーディスの仲は疎遠となっていた。
前まではほぼ毎日のように行動を共にしていたというのにそれがパタリと止み、まるで話そうとしなくなったのだ。
クィディッチの試合も、それでスリザリンが敗れた事も、そしてまた新たに『継承者』の犠牲が出た事も、二人の心を揺らす事はなかった。
別に大喧嘩したわけでも、口論したわけでもない。ただイーディスがミラベルに話しかけなくなったという、それだけの事なのだ。
たったそれだけの事で、二人の間にあった偽りの友情は儚く消え去った。
廊下ですれ違っても言葉を交わす事はなく、イーディスが時折視線を送ってくるのに気付いていながらミラベルは何も反応を返さない。
イーディスは歩み寄る勇気が持てず、ミラベルは歩み寄る気そのものがない。
そんなぎこちない関係が2ヶ月程続き、クリスマスも目前となったある日の事だ。
ミラベルが廊下を歩いていると反対側から銀色の髪をなびかせて少女かと見紛う線の細い少年が歩み寄って来た。
ハッフルパフの1年生でありミラベルの弟でもあるシドニー・ベレスフォードだ。
彼はミラベルの前で止まると、少し固さを感じる口調でゆっくりと話す。
「姉上」
「シドニーか。どうした?」
「今夜開かれる『決闘クラブ』の事はご存知でしょうか?」
「ああ」
決闘クラブの事は勿論知っている。
だがミラベルは然程興味を抱いてはいなかった。
というのも、その決闘クラブの開催者がギルデロイ・ロックハートであり決闘も途中で中断されるとわかっているからだ。
だがシドニーはその事を知らず、そしてかなり乗り気になっているらしい。
「貴様は出るのか?」
「はい。姉上は?」
「気が乗らん……が、貴様が出ると言うのならどの程度腕を上げたか見るのも一興か」
「有り難きお言葉……必ずや、ご期待に応えて見せます」
正直出る気は全くなかったのだが、これで出ないわけにはいかなくなった。
まあ弟の成長具合を知りたいと言うのは本当だ。
何せ彼は忠実な駒の一人だ。どのくらい使えるのか、というのは大事な事である。
決闘クラブに出る事を約束してからシドニーと別れ、授業へと向かった。
「皆さん集まって! さあ、私の声が聞こえますか? 私の姿が見えますか? 結構結構!
ダンブルドア先生から私がこの決闘クラブを開くお許しを頂けました。私自身が数え切れない程経験してきたように、自らの身を守る必要がある万一の場合に備えて皆さんをしっかり鍛え上げる為です!」
大広間で生徒達を見渡しながら演説しているのはロックハートだ。
彼は金色の舞台の上に立ち、いちいち大げさな挙動を加えながら、まるで芝居のように話す。
「では助手のスネイプ先生をご紹介しましょう。彼がおっしゃるには決闘についてごくわずかにご存知らしい。
訓練を始めるにあたり短い模範演技をするのに勇敢にも手伝って下さるというご了承を頂きました。
しかし若い皆さんにご心配をおかけしたくないので先に言いますが、私が彼と手合わせした後でも皆さんの魔法薬の先生はちゃんと存在します。ご心配めされるな!」
ロックハートは案外、他人の神経を逆撫でする事に関して天性の才能を持っているのかもしれない。
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