第8話 ベレスフォード
――まず必要なのは親族の新鮮な血である――
――次に、666匹の蝙蝠――
――若い生贄が必要だ。生贄は清らかな乙女である事が好ましい――
――儀式は満月の夜でなければならない――
――生贄と親族の血で染まった薔薇を6つ、ゴブレットに入れよ――
深夜3時。
全員が寝静まっているスリザリンの女子寮で、一つだけモゾモゾと動く布団があった。
それはミラベルの入っている布団だ。
彼女は布団を頭から被りながら魔法で明かりを灯し、閲覧禁止の棚から持って来た本を読んでいた。
上手く盗む事には成功したが、ずっとこの本がないと怪しまれるのは間違いない。
ならば早めに返してしまう為にもさっさと全部読んで脳に叩き込んでおく必要があるだろう。
幸いにしてこの出来のいい脳味噌は一度読めば完全に記憶してくれるので内容を模写する必要などはない。
かなり厚い本で、全編に渡り儀式の手順や必要な道具、その入手法。
過去に儀式を行った人物の失敗例や成功例、メリットやデメリットなどが書き連ねてあるが覚える事は可能だ。
(ヴォルデモートの奴はどういう方法かは知らんが肉体を失っても生き延びる事が出来る。
ならばそれに対抗するにはこちらも不死となるのが最も手っ取り早い。
……が、この方法ではヴォルデモートの不死身ぶりには一歩劣ると言わざるを得んな……)
世界の覇権を狙う以上ヴォルデモートやダンブルドアと戦う事は確定事項だ。
だが不死身のヴォルデモートに今世紀最大の魔法使いダンブルドアが相手とくればいかに自分でも勝つのは難しい。いや、ハッキリ言って今のままでは勝ち目などない。
ならば対抗するための方法が必要だとミラベルは考えていた。
そしてその方法こそがこの本に記された『儀式』なのだ。
「キキッ」
「……ピョートルか。そちらの首尾はどうだ?」
枕元で鳴き声が聞こえたので見てみれば、そこにはペットである黒い鼠が立っていた。
彼は入学してから今日までほとんどミラベルの前に姿を見せていなかったが、勿論それには理由がある。
ピョートルには今までこのホグワーツにいるネズミ達の制圧を任せていたのだ。
鼠ほど建物の構造や抜け道を熟知している生き物はこのホグワーツにいない。
彼らはあらゆる場所にいるし、あらゆる場所を出入りする。
そこでミラベルは、その全てを己の制御化に置き、使い魔にする事が出来ればホグワーツの全域をカバー出来ると考えた。
思い立ったがすぐ実行。魔法で強化したピョートルを学校に放ち、今までネズミ達の侵略を任せていたのである。
一見平和なホグワーツであったが、その裏では熾烈なネズミ達による支配戦争が行われていたのだ。
「キキッ……」
「……校内の半分は制圧完了か……上出来だ、ピョートル。
ならばその半分を率いて残る半分も制圧して来い」
指先から魔法を放ち、ピョートルに強化魔法をかける。
元々他の鼠よりも活きがよく、暴れん坊なこの黒鼠はお山の大将にうってつけだ。
そこに強化までかけているのだから並の鼠では歯向かう事すら出来ないだろう。
彼女の指示を受けて黒い鼠は夜の闇に消えていき、後には静寂だけが残った。
(この策が上手く行けば校内で私の眼が届かない場所はほぼなくなる。
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