ハーメルン
家長カナをバトルヒロインにしたい
第十幕 カナの誕生日 後編


「今日この日より、我が清十字怪奇探偵団に――新メンバーが加わることとなった!!」
『新メンバー!?』

 予想だにしないその言葉に、一同は驚きの声を上げた。

「ではどうぞ!!」

 皆のその反応に満足した表情で清継は廊下にいるであろう、その新メンバーを教室内へと呼ぶ。
 開かれた扉の向こうに――その先にいた人物にカナが目を見開く。
  
「凜子、先輩」

 教室に入ってきたのは、白神凜子その人だった。
 だが、いつもの凜子とは大分雰囲気が違う。
 顔の右半分を覆い隠していた長い髪が後ろで束ねられており、彼女の顔が良く見える。
 彼女の、目元に生えている鱗がはっきりと視認できるような状態になっていたのだ。
 しかしそのことを気にする様子もなく、凜子は明るい表情をしていた。

「ふふふ、驚いたかね? 実は昨日の帰り際、こっそりと勧誘しておいたのさ!」

 昨日の帰り。
 迎えの車らしきリムジンに乗り込もうとしていた凜子に、清継は声をかけていたという。

「――白神凜子さん」
「――ええと、貴方は?」
「――清十字怪奇探偵団団長の清継です!」
「――清継くん。なにか用かしら……」
「――はい! 単刀直入にお伺いします。凛子先輩――」

「――是非、我が清十字団に入部しませんか?」

 
「そのときは返事をもらえなかったが、昼休みにわざわざ僕のところに来てくれたよ、是非入部したいとね!!」
「よろしくお願いね、皆さん」

 思いもよらない人物の登場に、昨日の騒動に遭遇していた面子が呆気にとられている。
 その場にいなかったつららと島が、そんな皆の反応に疑問符を浮かべていたが。
 
「……先輩」

 一拍遅れて、カナが凜子に駆け寄る。

「カナちゃん。私、決めたよ……」

 凜子が何かを決意したように、真っ直ぐにカナを見つめる。

「いつまでも、怯えてばかりいられないもの。それに……」
 
 彼女はそれまでとは一味違う、影のない屈託のない笑みで微笑みを溢していた。
 
「ここにいる人たちとなら、私も変われると思うから」
「先輩!」

 凛子の言葉に、カナは笑顔になった。
 笑いあう二人の様子に、呆けていた他の団員たちの表情がパッと明るくなる。
 
「よっしゃー! じゃあ、今日は凜子ちゃんの入団を祝ってカラオケでも行こうぜ!!」

 いつもの調子を取り戻した巻が、凜子と肩を組む。
 積極的な巻の行動に、前向きになった凜子もさすがに戸惑うが、そんなことなどおかまいなしに、巻も鳥居も、凛子へと寄り添っていく。
 
「うん、行こ、行こ!!」
「待ちたまえ! まだ、今日の妖怪体験談発表会がまだだぞ!」
「そんなもん、あとだ、あとだ!」

 こうして、いつものように笑顔で笑いあう少年少女たち。
 その輪の中に新しく入った、その少女もまた笑顔を浮かべる。
 
 些細だが、確かに得た『幸福』に、白蛇の鱗が鮮やかに光り輝いていた。
 

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