第十六幕 生徒会選挙・序
「ちっ、あの馬鹿……帰れつっただろうが」
体育館後方、春明が苛立ち混じりに舌打ちをする。
犬神がリクオに噛みつく瞬間を、彼は顔色一つ変えずに見送っていた。魚を釣るならしっかりと餌に喰いついたところを狙うべきだと、春明は犬神がリクオの首元に牙を立てる瞬間まで、待機するつもりでいた
だが、そうなる前にその凶行を阻止するべく、その人物は上空から舞い降りていた。
その槍で犬神の首を叩き落とし、リクオの窮地を救ったのだ。
彼女がこの場に乱入することは、彼の予定の中にはない。
そもそも、彼女を妖怪関係の荒事に参加させるのは彼の本意ではなかった。
「あいつ、どうするつもりだ?」
いつでも陰陽術を行使できるように身構えつつも、春明はその場で待機する。
そして壇上に現れた、巫女装束に狐面で正体を隠した少女――家長カナに目を向ける。
「まったく……聞き分けのない女だ……相も変わらず」
その顔を、まさに不機嫌そのものに歪めながら。
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