第十七幕 生徒会選挙・破
だが――
「まずい。リクオ様を狙っている! 今、リクオ様は人の姿。こんな巨体にやられたら――」
この首無の叫びは、強制的に中断されることになる。獣の腕が首無や他の護衛たち、カナを蹴散らす。
吹き飛ばされたカナたちの体が、壁や床に打ち付けられる。
「ぐっ!?」
ステージ上の壁に激突したカナは苦悶の表情を浮かべるが、ダメージ自体は軽症だった。
カナの着ている巫女装束は春明の作った式神である。そのためか、見た目からは想像もできないほど頑丈な作りになっており、並大抵の衝撃ではビクともしない。だがそれでも、完全にダメージを消すことができず、足元がおぼつくカナ。
しかし、なんとか立ち上がろうとした彼女の視界の先に、無情にもその光景は映し出された。
巨犬が、護る者がいなくなったリクオの頭部を前足で掴む光景が――
犬は掴んだリクオを、壇上にあった椅子やカーテンを巻き込みながら、床目掛けて叩きつけた。
カーテンが邪魔でリクオの姿が見えなかったが、メキャメキャと嫌な音が聞こえてくる。カナの脳裏に最悪な結果が過る。
「「リ、リクオ」くん!!」様!!」
護衛たちとカナが悲痛な叫びを上げる。一旦腕をリクオから放した犬妖怪。尚も攻撃を続けようとして、腕を振りかぶり――その動きがピタリと止まる。
「――あれは!?」
突然硬直した犬。見れば、その前足がパックリと裂かれていた。まるで刀で切り裂かれたかのような、深い傷がその前足に刻み込まれている。
そして――『彼』の真実が闇の奥から暴かれる。
「陽は――閉ざされた」
――………え?
聞き覚えのある声の響きにカナの心臓がドクンと高鳴る。聞こえる筈のない声、ここにいる筈のない人の言葉。
「この闇は――幕引きの合図だ――」
――あ……あの人は………。
その男はそこに立っていた。
着物姿に片手に刀を携えて。
まるで最初からそこにいたかのように。
幼馴染のリクオと入れ替わるかのように。
自分の窮地を何度も救ってれた『彼』がそこに立っていたのだ。
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