第十九幕 生徒会選挙・後片付け
浮世絵中学校の生徒会選挙は候補者の演説後、すぐにその場で生徒たちによる投票が行われる。
今年度の生徒会長候補者は――四人。
当然ながら候補者は全員が中学生であり、心身共にまだ子供だ。
成績優秀者を集めたような進学校ならいざ知らず、ごく一般的な学校である中学校にこれといって特出した生徒など、滅多にいるものではない。身も蓋もない言い方をすれば、誰が生徒会長に選出されようと、大した違いなどありはしないと。学校側もそれを承知で、生徒たちの好きなようにこの生徒会選挙の運営を任せていた。
たった一人――清十字清継という生徒を除いては。
彼はこの浮世絵中学一の変人にして、有名人だ。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。ワカメっぽい髪型や、性格と趣味に若干の問題はあるものの、その点に目を瞑れば実に優秀といっていい生徒である。
まだ一年生ながらも、生徒会長に立候補したその度胸もあってか全校生徒の注目の的となっていた。
そんな彼が演説で行ったパフォーマンス?は、さらに皆の関心を引いたことだろう。
順当に行けば、彼が今年度の生徒会長に選ばれることになっていた。
だが――
「な、なぜだ?」
清継は膝を突き、今にも消え入りそうな声で目の前に張り出された、その結果に目を通した。
「……なぜだ?」
何度も何度も疑問を口にするが、残酷なことに結果が変わることはない。
「なぜだぁぁぁぁぁぁあ!!」
残酷に立ち塞がるその事実に、彼はガゴゼに襲われて以来の絶叫を校内に轟かせていた。
×
「いやぁ~……一時はどうなることかと思ったが、なんとかなるもんだねー、土御門くん!!」
会長候補の一人だった男子生徒の西野が、いかにも上機嫌といった調子で自分の席でだるそうに目を擦っている土御門春明に話しかけている。
春明の肩をポンポンと叩きながら、ハイテンションに笑う西野。
「……に、西野くん、もうそれくらいで……」
その隣の席で、白神凜子が冷や汗をかきながら、西野に止めるように注意を促していた。
春明の性格を多少なりとも知っている彼女からすれば、西野の馴れ馴れしい態度にいつ彼が怒り出すかもしれないと、とても穏やかな気分になれたものではなかった。
実際、凜子の視界から春明の額に青筋は浮かんでいるのが見えた。いつ切れだしてもおかしくない爆弾の導火線。だが、彼女の心配とは裏腹に、春明は行動を起こそうとはしない。
それほどまでに、先ほどの騒ぎで疲れているのだろう。ギロリと視線だけを西野へと向け、不機嫌そうに眉をひくつかせているが、それに気づいた様子もなく、西野は機嫌よさげに笑みを溢す。
「前々から、きみの言葉には妙な威圧感や説得力があると思っていたが、まさかあの状況から巻き返せるとは思わなかったよ」
「………別に、たいしたことを言ったつもりはなかったんだがな……」
西野の賞賛に、興味なさげに呟く春明。
その呟きに、凜子は先ほどの騒ぎ――生徒会選挙終盤の出来事を思い出していた
×
巨大な犬の化物。狐面に巫女装束の少女。
首のない男子生徒。鋭い眼光に着物を見事に着こなした青年。
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