第五幕 闇の鼠は猫を喰らう
肉片となったネズミの体を冷徹な瞳で見下ろしながら、踏みつぶす。
『なんだよ、春明? やけにご機嫌ナナメじゃないか。大丈夫かよ?』
「黙っとけ、面霊気。――ふん、少し眠くてイライラしてるだけだ」
すると、そんな春明のご立腹な様子に、狐面――面霊気が声をかける。
長年、彼の相棒を務める彼女は春明の不機嫌さに敏感に気づいていた。
しかし、その気遣いを突っぱね、春明は何事もなかったようにその場から歩き出す。
「まったく――今日は疲れたぜ……早く帰って寝ようか……ふぁあ~」
『そだな……カナの奴も、じきに帰ってくんだろ』
首をコきりと鳴らしながら、生あくび。
つい先ほど、妖怪とはいえ命を奪ったとは思えないほど軽々しい態度で。
彼は、春明と面霊気は夜の闇の中へと消えていった。
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