無色な私と極彩色なあなた
朝。
昼間より涼しい冷やされた空気を肺いっぱいに吸い込む。
真新しい制服に身を包んだ俺の心は軽い。
それはもうこの往来で今にでも踊りだしてしまいそうなくらいだ。
数日前、俺の家に雄英高校から封筒が届いた。
その中に入っていたのは未確認飛行物体の親戚のような形をした謎の円盤。
どこをどうすれば良いのかわからないままとりあえず机に置いてみると、大音量で『私がーー、投影されたぁ!!』という言葉に椅子からひっくり返った。
それはもう手に持ってた紅茶を頭から被るという盛大なやらかしっぷり。
しかもどうやら大音量だったのは俺が上にして置いた面がスピーカーの付いている裏側だったようで、本来表になる筈であった映像が投影されている方は机に押し付けられていた。
そのせいで一番迫力のあるシーンが見られなかった事に若干しょんぼりしつつ、オールマイトの説明を聞いた。
どうやら俺はなんとかギリギリ合格に滑り込んだらしい。
数学は特に本当にギリッギリだったようで『四ツ神少年は高校に入ったらまず数学を頑張る必要がありそうだな!HAHAHA!』と笑っていた。
何わろとんねん。
俺としては大変苦笑いモノだ馬鹿野郎。
俺だって割と精一杯やったんだよ……!
まぁ、結果が伴っていないので是非もなし。
ともあれ俺も無事轟が進学する雄英高校ヒーロー科に合格できた。
その喜びを噛み締め、目出度く本日は入学式である。
「♪~~」
最近動画投稿サイトで見つけたお気に入りの曲を口遊みながら考えるのはあの無表情な友人が俺の顔を見てどんな反応をするか、だ。
驚くだろうか。
喜んでくれるだろうか。
あの顔が俺の行動に対して表情を変えてくれるのが嬉しくてたまらない。
小走りで歩道橋を登りきったとこでふと頭の中に一つの考えがぽつんと浮かび上がった。
なんだかこれってまるで――俺が轟のこと――――。
「いやぁ、無いな!ただ俺があいつのことからかいたいだけだし」
再び轟の反応に心を踊らせながら道路を上を伸びる歩道橋を歩く。
ああ、まだ登校もしていないのに学校が楽しみだ。
目的地に到着し、そのバリアフリーでユニバーサルデザインなデカイ扉の前に立つ。
ここで一度深呼吸。
吸って―、吐いてー。
っしゃオラ行くぞテメェら!!
と言っても今俺一人なんだけど。
やばい緊張とワクワクのせいで頭おかしくなってんな。
落ち着け、なんのために深呼吸したと思ってる。
もう一回しとこう。
すぅ、はぁ。
よし、今度こそ大丈夫。
意を決して扉に手を掛ける。
掛けた手をゆっくり引くと、扉は静かに横へスライドして行った。
彼女は、同じクラスに居るだろうか。
俺はここに来るまで知らなかったが、どうやらヒーロー科はもう一クラスあるようで、もし轟がBクラスだった場合は大変悲しいことになる。
まぁ、その時はきっとあいつじゃあ高校生に成っても口下手で天然でぼっち飯だろうから、昼飯ぐらいは一緒に食ってやってもいいな。
教壇の前で足を止めて、クラス全体をぐるりと見回す。
そして、見つけた。
クラスの端っこ。
見覚えの有りすぎる紅白饅頭みたいなカラーリングのロングヘアー。
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