おっけーぐーぐる、念とは?
この世界に生を受けてから約二週間。しばらくずっと、あたりに聞き耳を立てては、情報を集めていた。
この二週間でかなりの収穫を得ることができたと思う。
まずはこの家の家族構成。
現在の当主は私の父、シルバって人。なんかすごく怖そうで、威圧感のある人だった。あのおじいさんはその一代前の父方の祖父にあたる人物。でもおばあさんに当たる人は今の所見たことがない。そして私の母はゴーグルをかけたよくわからない人。声が高くて妙にヒステリック。で、3人とも現役の暗殺者。
そして兄弟。これは上に4人いるみたい。特に一番上のイルミって人は目に色がなくてすっごく怖い。今のところ数回しか会ったことはないけど、とにかく異質な気配をひたすらに感じるのだ。
次男に当たるのがミルキって人。この人はなんだかもう、丸い。とても丸い。でも、すごい技術があるっぽい。部屋の外に出てくることはほとんどなくて、唯一外で見かけたのはおじいさんと何かの受け渡しをしている時だった。二人の会話から予想して、多分爆弾みたいなもの。その感じからして、裏方仕事みたいなのを請け負っている人なのかもしれない。
そしてちらちら名前をよく聞くキルアって子。この子は唯一雰囲気が明るい。変な影も背負ってないし。で、次期当主候補。なんて三男が?って感じはするけど、まあ複雑な事情でもあるんでしょう。
この3人は私を見に来たりとかで比較的よく会う。でも最後の四人目はとても謎。
その子の名前は、アルカ。この家で唯一暗殺に携わっていない子。どうやらどこかの部屋に閉じ込められているらしく姿を見たこともない。使用人がその子について話すときはすごくヒソヒソしてて、あんまり耳に入れたくないのかも。忌み児みたいな。やだねー。
そして最後に生まれたのが私、カルト。性別は女。前世と同じ性別なのは普通に幸運だったかも。五人兄弟の末子だからそれほど重い期待も寄せられてないみたいだし、気楽っちゃ気楽。まあまだ高々二週間きりで得た情報だから見えてないこともたくさんあると思うけど。
そして、入ってきた情報でいちばん重要で、一番恐ろしいもの。それが、どうやら今日から始まるらしい。
そう思うと同時に、扉が開く。
「カルト、時間だよ。行こうか。」
そう言いながら私をベットから降ろして立ち上がらせるのは、長男イルミ。
相変わらずの声の抑揚のなさ。本当にこの人感情あるんだろうか。すごく心配になってきた。
でもまあ、今は自分の心配が優先事項だけど。
そう、この家は暗殺者にするために子供に世にも恐ろしい拷問を課しているのだそうだ。ざっと聞いた感じ、毒の服用や電撃などなど、それから多種多様な戦闘訓練。とにかく一歩間違えれば死にかねないようなことがたくさんだった。
いや、確かに強くさせてもらうのはありがたいとは思う。今後生きていくために力は必要だしね。
でもさあ、電撃食らわせるとか、毒飲ませるとか、もはや虐待とかそういう領域超えてるよね?家庭裁判所行きからの全国ネット総叩きが始まっちゃうよ。
まだ生まれてせいぜい一年くらいしか経ってないような子にそんなことしたら本当に死んじゃうかもしれないと思うんだけど。一度死んだからわかるけど、死ぬ瞬間の意識が遠のく感覚は決して愉快なものじゃない。正直二度目は嫌だ。
そんなことをうだうだと考えていると、イルミに軽く手を引かれる。言外の早くしろ、には抗えない。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/7
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク