第10話 勧誘
「おっお前は誰だ」
子鹿のようにぷるぷる震えながら俺の前に立つ少年は精一杯強がる。
これが後年キリングマシーンと呼ばれる英雄なのだが、今はただのニート。
特殊部隊に命令して拉致してきた目標2である。
さて、どうするかな。
「オジサンかい。オジサンはジオンのトップのギレンって言うんだ」
にこっと笑い、下積み社会人の経験を生かし目一杯フレンドリーに挨拶する。
「ギレンだって! なんで僕を誘拐なんか」
ヒキコモリでも流石にギレンの名は知っているようだ。
「それはね。君に才能があるからだよ」
「僕に才能?」
「そう。是非君を勧誘したくてね。でもおじさんジオンの偉い人じゃん、会いたいと思ってもオジサンの方からは会いに行けないじゃん。
だから多少強引だったけど君に来て貰ったんだ。
勿論強引だったことは謝るよ。申し訳なかった」
俺は一回りも下の少年に深々と頭を下げる。
それに気をよくしたのか少年の態度か和らぐのを感じ取れた。
ちょろい。社会経験の無い引き籠もりなど手玉の如くよ。
「それで僕に何をさせる気だ」
「私と一緒に人類を革新して欲しい」
「人類の革新」
「君は聡い子だ。だからこそ絶望して引き籠もってしまったんだろ。
今の地球連邦政府は腐敗しきっている」
と色々とご託を述べて。
「腐敗した世界を変えられるのは君しかいない。
どうか君のその力貸して貰えないか。
勿論断ってもいい。その場合君を無事家に送り返すことを約束する」
と最後ちょっと逃げ道を与え締めくくって、力強く肩を叩いた。
これで少年は俺が悪には思えなくなったはず。
勿論、ノーと言われたら本当に家に帰す気だ。
何も勧誘は一回しかしちゃいけないことは無い。振られても機会を見て再び勧誘するつもりだ。
三顧の礼という奴だな。
こうして誠意を見せればいつか心を開いてくれる。
「でも僕にそんな力なんて」
これは謙遜か卑屈か? どっちか分からないが、ここは大人の狡さで天秤を傾けさせて貰おう。
「イエスと言えば、君にこれを託そう」
そう言ってディスプレイのスイッチを押し、映し出されたのは先程の戦いで大活躍をしたジオン製ガンダム。
「こっこれを僕に」
メカオタクだけあって格好いいメカを見せた途端目が輝きだした。
いや、元々少年とガンダムの出会いは必然。
運命の力に少年の心が抗えるというのか、いやない。
「これを自由にしていいの?」
「ああ。その代わり私に力を貸して欲しい」
「分かったよ。僕の力を貸す。そして世界を変えよう」
「ありがとう」
「はい」
俺と少年は固く握手した。
「そう言えば名乗ってませんでしたね。
僕はアムロ・レイ。アムロと呼んで下さい」
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