アデレードという女
深夜、湖に浮かぶボートに私とグレース。そしてジェローム神父の指名を受けた数人の若者と共に乗り込んだ。
コヨーテ・ネルソンが教えてくれたのだ――。
彼は「いいか、保安官?」そういうと
「俺が思うにアンタが向かうのは、刑務所ではないと思う。
ヘンベインリバーの北側、そこにドラブマン・マリーナがある。そしてあそこにはアデレードがいる。
俺はあんたはまず、彼女の協力を求めないといけないと思うな。
元々あそこは地元の名士、ドラブマンが所有する場所だったが。彼の妻だったアデレードが離婚後に権利を手にいれたんだ。
彼女は才能もあって勝気な女性だから、ペギーも騒ぎだす前もあそこには手を出せずにいたんだ。
マリーナはヘンベインリバーとホワイトテイルの境に丁度位置しているんだが、湖と険しい山脈に挟まれた要害の地だったし。そんな彼女が居座るせいで、ジェイコブもフェイスもお互いが遠慮して手を出せずにいたんだろう。
それが最近、ついにペギーに占拠されてしまったと噂を聞いた。
以前の彼女は騒ぎと距離を取りたがっていた、とも聞いているから。きっと今なら怒ってレジスタンスに力を貸してくれるかもしれない」
「ということは捕まったのよね?どこにいるの?」
「たぶんまだそこにいるだろうな。怒った彼女は美しく素晴らしいが、同時に恐ろしい。
元気な彼女をペギーがどうにかできるとは思えない。元の旦那もそれを見誤ってひどい目にあわされた。
だからきっと、あそこを取り戻したアンタに彼女は感謝して。自分からジェイコブやフェイスを苛立たせるようなことを嬉々として行うと思う」
念のためスプレッドイーグルでメアリーに確認すると、コヨーテの言っていることに間違いないだろうと彼女も認めた。
操縦席に座るグレースに目で準備ができたと知らされ。私は口を開く――。
「ヘンベインリバーにむかうわ。マリーナを解放し、アデレードにレジスタンスへの参加を求めるつもり。
作戦は三段階にわけてある、これは確認よ。
まず湖の孤島にグレースをおいて、私はそこからマリーナへと泳いで侵入する。ボート残ったあなた達はそこから離れた場所で上陸、湖岸を歩いてマリーナに向かってもらうわ。あとは合図で攻撃を開始となる。何か質問は、ない?」
若者たちの緊張した顔で沈黙を守ったままうなずいた。
グレースはボートのエンジンにスイッチを入れる――。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
マリーナの桟橋には複数のボートやジェットスキーが止められており。
近くにはなぜかだらけた風のペギー達が、まだ日も登らないうちからそこに集まって何事かを話しているようだった。
『まさか、朝のお祈りでも始めるんじゃないでしょうね』
「――それなら楽に片付きそう」
無線越しにグレースとそう会話しつつも、私もまた当初の予定を変えて桟橋ではなく森の中を通って建物の裏から屋根へと昇っていく――。
ロイドが出かけに新しい武器を送ってくれたおかげで、私の装備も変わっている。
今回は世界に知られた銃、AK47の後継でもあったAKMが送られていたが。それとは別に、私のためにとわざわざAK74Mが混ざっていた。
このAK74Mは、そもそも1990年代にロシアに配備されたものだが。近年ではさらにツールで強化できるものが市場で出回るようになっていた。私は迷うことなくそれに手を伸ばしたのだ。
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