DAY3
翌朝、シャベルは雑貨屋に並んでいた簡易式の短いタイプにして、ペギーから回収した投げナイフに手りゅう弾。これにリボルバーと、ウィンチェスター銃に弓矢を揃えて私は出発した。
フォールズエンドを抑えたことで、このホランドバレーでようやくのこと動き始めたレジスタンスだが。
武器、人、食料と。とにかく足りないものがあまりにも多すぎる――。
それでも町ではジェローム神父が防衛と通信を担当し、物資の管理などはメアリーが見てくれている。ないからできません、とは言えない状況なのだ。
そして町を離れると、奇怪で不快なペギーたちによる銃と暴力の世界がある。
ホランドバレーでは珍しくもない幾つかの農場を横切ると、そのたびにおぞましい景色が目に飛び込んでくるだろう。
農場に放り出されたままの、なぜ自分が殺されなければわからない。そんな哀れな人々の亡骸が放置され、その死肉を求めて獣が集まり。むさぼられるのを見た。
抵抗できないように立木に目隠しで縛り上げたうえで、肉塊になるまで生きたままズタズタになるのを良しとする。人間射的に興じて楽しそうに笑っている信者たちの姿もあった。
そうしたものを横目に通り過ぎる時、私の心は。
愛するものを踏みにじられる怒り、助けられないという苦しさ。それがすっかりくすぶることも忘れて消え去ってしまったと思った炎を。静かではあるが、再び息を吹き返して。この役立たずの体を少しで動かせと、声をあげている。
私は怒りを感じている。
警察だからではない、保安官であるからでもない。自由を愛する、この国を愛する。ただのひとりのアメリカ人として奴らに激怒するべきなのだ。
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それまでもカウンティ―ホープではのどかな大自然を背景に、いつもどこかから銃声が聞こえてきてはいたが。
それが自分の目指す方向の先だとわかると、にわかに焦りが生まれ。慌ててブーマーの背を軽くたたきつつ、速足で木々の間を抜けて教会目指して突き進む。
「――何が起きてるのよ」
地図によればもう少し先に行くと教会前の大通りに出るであろうというあたりに来ると。木々の間からのぞいた私は、驚くような光景を目にしていた。
そこでは攻める側と守る側で、戦争をやっていたのだ。
教会を軍事砦とでも解釈しているのか、ペギー達は車を並べて乗りつけると。次々に教会を目指して突入しようと試み。
防衛する側は、教会の屋根の上に陣を張り。そこから下に向かって誰も近づかせまいと、必死に撃ち続けて抵抗をやめようとしない。
とはいえ、すでに勝利は決しようとしている。教会はここから見てもわかるが、下の入り口を破壊されており。それはつまり建物の下の階にペギーが入り込んでいるのは明らかだということ。
駆けつけるのが遅かったか?
このまま何も見なかったことにして、離れていくべきだろうか?
態度を決めかねていると。2人、強引に屋根にのぼっていったペギーが誰かに撃たれて転がり落ちるのを見た。まだまだ、抵抗をやめる気はないらしい。
(あんな場所に閉じこもるなんて――なにか守りたいものでもあるっていうの?)
とにかく助けなくてはいけないだろう。あんなものを見せられては、退却するという選択肢はもう選べない。
そうなると、問題は車道で列をなす車の陰にまだ待機しているペギー達だろう。
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