p.10 失われた魂
*リーフィアside
「さて、あれで倒れてくれれば楽だったんだけど。そう甘くはいかないみたいだね」
岩の残骸に埋もれたミカルゲが立ち上がる。容姿は要石のひび割れから紫色のガスみたいなものが円状に吹き出していて、グレイシアがタックルできたことから一応実体はあるらしい。
「追い打ちをかけるぞ!ソーラービームはできるか?」
「もちろん」
昨日のソーラーブレードはソーラービームを高密度に形作ったもの。であればソーラービームも当然できる。
"ツインソーラービーム"
ロズレイドの花に、リーフィアの葉に、淡い光が集約していく。
陽が沈むということは即ち草タイプの力の源である太陽の恵みを失うということ。そして同時にゴースト・悪タイプの時間になるということでもある。黒い物体ーー恐らく影だろうーーを扱っていたミカルゲもその例に漏れない。
加えて御霊の塔の封印が解け、力を封じているのは要石の封印のみ。ミカルゲも指を咥えて封印を放っておく道理はないだろう。
だから溜め時間が長いことを差し引いても一撃で仕留めるためのこの選択は限りなく最適解だった。
ただ一点を除いて。
「フハハハハ!大事な子供達を傷付けてもいいのか?」
力なく項垂れたゴンベとマネネがミカルゲを守る様に立ちはだかる。
「ゴンベ!マネネ!」
ロズレイドが呼びかけるがスボミーの時と違って応答がない。2匹の様子からも操られていることは明らかだった。ロズレイドとリーフィアの光は萎むように消えていき、それとは対照的にミカルゲの2つの玉が黄緑色の蛍光を妖しく発する。
「お前…卑劣な手を…!」
「卑劣?面白い冗談だな。3対1で更に追い打ちまでかけようとしていた奴がよく言える。弱者の立場なのだからどんな手段でもなりふり構わず使うのは当然だろう?」
「お前こそ面白い冗談だな。子供達の意識を掌握したのは私たちが着く前だろうに」
「ククク、騙されないか。だが、我は単に人質をとるために操っているのではない。あくまで魂を集める目的のついでだ」
「魂を集める…?」
封印を解けばそれで終わりじゃないのだろうか。
「ああ、我は108の魂からなるポケモン。して、御霊の塔や要石の封印を解けば力は戻るが完全ではない。再び108の魂を揃えて初めて完全体になるのだ」
なるほど、今はゴンベとマネネの2つだけ。とりあえず猶予はある訳だ。
であれば依頼のもう1つの目的。
「1ヶ月前の怪現象で記憶を奪ったのもお前か?」
「知らないな、そもそも我は500年間もの間封印され続けていたのだからな。あぁ、だが1ヶ月前に封印が弱まったのは確かだ。おかげでこうして復活できた。その怪現象の主とやらにも礼を言わねばな」
今回も解決に繋がる手がかりはなしか…
いや待てよ?ミカルゲを封印した伝説のポケモンなら何か知ってるかもしれない。
「リーフィアすまない」
"???????"
「これ以上は時間をかけられないんだ」
ロズレイドが紫の玉を放ち、ミカルゲはゴンベを盾にする。
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