p.14 ムクも食わない幸せ【挿絵】
*リーフィアside
「……終わったのね」
グレイシアは微かに震えている。
ーー安心からか
ーー暗闇への恐怖からか
ーーお守りを失った悲しみからか
少なくとも寒さからくる震えではない。
恐らくいろんな感情が混ざり合って気持ちの整理がつかないでいるのだろう。
「ごめん。大切なお守りだったのに」
「いいの。約束は守ってくれたから」
ーー「ねぇ、約束して。これからあんな簡単に命を投げ捨てるような真似、絶対しないで。私をまた1人にしないで」
「よかった……本当によかった。救ってくれてありがとう」
私はグレイシアを優しく抱きしめて呟く。
「そんな大層なことじゃないよ」
一瞬ビクッとしたがグレイシアは嫌がる様子もなく身を委ねた。
「私からも礼を言うよ。リーフィアがいなかったらどうなってたことか」
「うんうん。っていつから起きてたんですか!?」
「全く…これはさすがに私も食わないですよ」
「…………!」
震えはいつの間にか違う種類のものに変わっていて
ーーもちろん右ストレートをくらった。ぶん投げられた恨みも込めて。
○
*タマンタside
「おはようございます」
病室にて2日にして3度目の挨拶を交わす。ここまでくるともう慣れたものでわざわざ「こんばんは」に訂正したりはしない。
「おはよう」
「どうして毎度1番の重症がグレイシアさんの右ストレートなんでしょうね」
ムクちゃんもミカルゲも激闘だったと聞く。なのに1番の重症がバトル外で、しかも味方からくらった右ストレートなんてちゃんちゃらおかしい話だ。
「私は悪いことしてないんだけどね。もしかしたら最強のポケモンはグレイシアなのかもしれない」
「ふふっ、リーフィアさんが悪いことだけは分かりました。さぁ宴会の準備は出来てますので行きましょう」
「信用ないなぁ」
「信頼しているからこそ、ですよ」
そう、リーフィアさんならどんなバトルでも「グレイシアの右ストレートの方が強かった」って笑って帰ってきてくれるだろうという信頼の裏返し。
○
*ケイコウオside
今回も例に漏れず宴会を開催しています。
えっ、私ですか?私はネオンギルドの広報担当です。もちろんギルドですからいろんな情報を集めたり発信したりする訳です。ポケモン図鑑を作る夢のついでと言ったらいけません。
今日は編入試験を合格してミカルゲを封印したという今注目の調査隊、チーム"スノードロップ"の全貌を明らかにすべく、宴会に参加させていただきました!今回の参加者はネオンギルド、黒鷹隊、チーム"スノードロップ"、ロズレイドさん、トリトドン先生で、子供達は疲れて寝ています。
おっ、ようやく主役の登場ですね!
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