p.5 フラッシュバック
*リーフィアside
「リーフィア!」
グレイシアの悲痛な叫びが響く。
なるほど、守るものがあるポケモンは強いな。
だが、それは私も同じだ。
大切なポケモンの記憶を失い悲しみに明け暮れてなお、瀕死の私を救ってくれる心優しい少女がいる。
一見クールビューティーに見えるけど実は感情豊かで、努力家で、恥ずかしがり屋で、ちょっぴり見栄っ張りな放っておけない少女がいる。
本来失っていた命だ。幸い、今の私は記憶喪失でこれ以上失うものは何もない。
記憶を取り戻す約束は果たせそうにないが、せめて全身全霊命を賭けて守ろう。それだけの価値が、魅力が、この少女にはある!
"ソーラーブレード"
○
*グレイシアside
リーフィアが遠くなっていく。
突き飛ばされただけの距離なのに、月のように遠くにある感じがした。手を伸ばせば届きそうなほど近くに見えるのに決してその手が届くことはない。
ああ、私はまた失ってしまうのだろうか。
短い間だったけど、このペンダントをいいお守りだと言ってくれた。今は忘れてしまった大切なポケモンだけど、そこに込められた想いを見抜いてくれて私は誇らしかった。助けてくれたお礼に命を賭けてその記憶を取り戻すと誓ってくれた。今日初めて出会った私なんかのために本当に命を賭けるなんてとんだお人好しだ。
ああ、私はそんなポケモンをまた失ってしまうのだろうか。
嫌だ、もうこれ以上失いたくない。
命なんて賭けなくてもいいから!
お願い逃げて。あんなの病み上がりのリーフィアじゃ止められっこない。
「誰かっ!誰でもいいから2匹を止めて!!」
分かってる。冬のテンガン山に助けてくれるポケモンなんているはずがない。
恐怖で足が竦んで立つことすら叶わない。
ああ、私はなんて無力なんだろう。
涙で視界が歪んでいく。
私は結末を見届けるのが怖くて目を閉じた。
○
*グレイシアside
突如として私の体を突風が襲う。
ーーしかし聞こえてきたのは衝突の音ではなく、ただただ突風の音だけ
何が起こっているんだろう。
恐る恐る目を薄っすらと開けてみる。
するとリーフィアやムクバード、ムックル達がそこにあったはずの木々や雪と共に巻き上げられていた。
ーーえ?
頭が真っ白になる。
正常な思考が戻った時には既に遅く、私は巨大な竜巻に呑み込まれた。
○
*グレイシアside
「ーーん……タマンタちゃん」
「おはようございます。いえ、今の時間帯ならこんばんはでしょうか。それにしても派手にやってくれましたねぇ」
タマンタに苦労の色が浮かぶ。私は何でポケモンセンターで寝てるんだろう。
………………はっ!
「リーフィアは!リーフィアは大丈夫なの!?あの後どうなったの!?」
「私も詳しくは知らないんですけどね、全員命に別状はないですよ。詳しいことは皆さん起きられたら師匠と隊長が説明してくれるらしいです」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク