p.8 死の花
*リーフィアside
「申し訳ないけど、お代は今度来た時に払うからこれ1つ貰えないかな」
「いつもグレイシアのお菓子を美味しくいただいてるからこれくらいはタダでいいさ」
「ありがとう、助かるよ」
「リーフィア〜早くしないと日が暮れちゃうわよ!」
店内入口にいるグレイシアが急かすとエテボースは笑みを深め、早く行ってあげなとばかりに自らの顎をクイっとする。
「じゃあ行きますね。カフェラテご馳走さまでした」
「これからも猿の腰掛けをご贔屓にね。あとグレイシアは君が思ってるよりも弱い子だから大事にしてあげなよ」
果たしてグレイシアは弱かっただろうか。否、気絶していて実際に見てはいないものの、1匹で黒鷹隊をほぼ半壊させるくらいには強いはずだ。
ではエテボースの言う弱いとは何か。
あぁそうか。戦いの後に泣きながら平手打ちされたのを思い出す。大切なポケモンがいなくなってしまった上にその記憶がぽっかりと消えてしまったのだ。やはりどこか無理をしているのだろう。
しかし悲しむ姿を見せずに明るく振る舞っているのを見るに寧ろ強い子だと思うのだが…
「何ボケっとしてるのよ。ほら、行くわよ。マスター、カフェラテご馳走さま。また来るわね」
「ああ、いつでも待ってるよ」
「「ご来店ありがとうございました!」」
駆け寄ってきたグレイシアに手を引かれ店を出る。エテボースの真意は掴めないが、いずれにせよ私の使命が変わることはない。待ってろ、御霊の塔。
○
*リーフィアside
「次はロズレイドさんの花屋「両手に花」よ」
「まだあるのか。というか皆店名で遊びすぎだろ…」
「とりあえず私が普段お世話になってるところはこれで最後だから安心して。ふふん、ネーミングセンスが悪いのは私だけじゃないのよ」
同列に扱われたエテボースやロズレイドがかわいそうである。もちろんタマンタみたいにからかったりはしない。私まだ死にたくない。
「調査はその後だな」
「えっと…その…暗い中調査するのは危ないから明日にしない?」
「怖いのか?」
「こ、怖くなんてないんだから!ただ500年も封印される恐ろしいポケモンだからしっかり準備してから明るい時に調査した方がいいでしょ?」
強がってはいるがグレイシアに怖がるなと言うのも無理な話だ。何せ怪現象の黒幕かもしれないポケモンなのだから。得てして恐怖というものは一旦植え付けられると心の奥深くにトラウマとして絡みついて決して消えることはない。これが厄介なもので忘れようと、自分を守ろうとするほど、反ってその棘は深く深く刺さっていく。そう、恐怖とは即ち呪いのようなものなのだ。それを解くには時に任せて風化させるか或いは…
「それもそうだね。日も傾いてきたしロズレイドの元へ急ぐとしよう」
○
*グレイシアside
…ふぅ、何とか誤魔化せた。暗闇だけはどうしても苦手なのよね。仕方ないじゃない、ポケモン誰しも苦手なものの1つくらいあるのよ。
幸いリーフィアは無自覚女誑しではあるが、タマンタちゃんのようにデリカシーがない訳ではないので必要以上に追及してくることはない。前者は著しく問題ではあるけど、それを除けば大人のポケモンって感じよね。ほら、今も急ぐとか言いつつ私にペースを合わしてくれてるし。上手くは言えないけど優しく包み込んでくれるような安心感がある。
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