ハーメルン
スカーレット家長男の憂鬱
2話


妹が泣きながら部屋に戻ってきたから何事かと思い話を聞くとどうやらアルクに拒絶されたようだ。絶対に起こり得た可能性だった、しかしそんなことフランにとっては慰めにもならないだろう。

「フラン、泣かないで?貴方は間違ってないから」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」

うわ言のように呟くフラン、思わず目を逸らしそうになるが私はフランの頭を撫で続けた。これが姉として出来る最善の事だと信じているから。

「私も拒絶されてしまいました…申し訳ありません」
「問題無いわ、初めから上手くいくわけないもの、気長にあの子に寄り添ってあげましょう?」
「はい!」

やはり咲夜の方も上手くいかなかったようだ、だが触れ合い話しかけなければ進展はしない。向こうから来るのを待っていたら一生元の関係に戻るのは無理だろう。

「お姉様、フラン頑張る」
「ええ、頼りにしてるわ」

フランが泣きながらもこっちを見てくれたので少し安心した。まだ大丈夫そうね。

「精神安定のブレスレットが完成したわよ」
「ありがとうパチュリー、あとはこれをどうやってあの子に渡すかね…」

たとえ私達であろうとあの子は警戒して何も受け取らないだろう、何百年と孤独に苦しめられたあの子を救うことが出来るのは同じ孤独を背負ったものだけ。私が代わりに背負ってあげたい、苦しんであげたい、あの子を喜ばせてあげたい、家族として、あの子に愛を注いであげたい。

あの子はほかの吸血鬼と違って羽根が半分程しかない、吸血鬼にとって羽根というのは権威の象徴、フランも変わってはいるが宝石のように美しく大きいので受け入れられていた。羽根が小さいと吸血鬼特有の能力も満足に使えない、力も魔力もあの子には無かった。

けどあの子には誰にも負けない優しさがあった。それに何度救われただろう、恩を返したい、このままでは与えられてばっかりな自分が惨めだ。満足に恩返しもできないのか、私は。

「だからこそ…私は…」
「お姉様…」

私達には時間が無いというのに…かくなるうえは…

「…この紅魔館に居てはあの子にとって負担になるのかもしれない…」
「じゃあ…どうするの?」
「もっと安らげる場所にあの子だけ移ってもらう、とか…」
「折角また会えたのに…?」

フランが悲しそうな顔をする。そして、そんな表情をさせてしまう不甲斐ない自分を責めながら思考だけは巡らせておく。

「それは最終手段だけど…、そういうことも考えていかないといけないのも確かね」

距離感を間違えてしまえば即アウト、今のアルクは爆弾のような存在だ。不用意に扱いを間違えればもう取り返しのつかないことになってしまうのは言うまでもないだろう。

けどその重さを心地いいと感じてしまう、もっと弱音を吐いて欲しい、わがままを言って欲しい。それを叶えることが姉として私が出来る唯一のことだから。





さて、どうしようか、これからのことを思うとかなり憂鬱な気持ちにならざるを得ない。ただ震えているだけではいつかバレてしまうと考えている、それに徐々に徐々に前の自分に戻していかないとこの身体の持ち主の少年も浮かばれないだろうからな、まあ身体返す気は無いけど。

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