ハーメルン
スカーレット家長男の憂鬱
9話

今俺は藍さんの尻尾に絡め取られ昼寝をしている。何故か鍋を食べていた時を境に、藍さんがよくこうして構ってくることが増えた。別に嫌な訳では無いがモフモフしているこの感触に包まれていると一生ここから動けなくなりそうで少し怖い。

肝心の藍さんはというとどうやら仕事のことを書き記しているようだ。そして橙は野良猫達を配下にする為にどこかに出掛けているし紫様は『博麗神社』なる建物に居る。そこでは博麗の巫女という妖怪に対する抑止力とも呼べる人物が代々幻想郷を守っているらしく、今その次代を担う巫女を育成しているところらしい。

「藍さん」
「どうしたアルク、眠たかったら寝てくれていいぞ。今日は良く働いてくれたしな」

優しい、理想の上司。

「あ、ありがとうございます。いや、博麗の巫女というのはどんな人物だろうと疑問に思っていて…」
「あー、あれは一言で言うと天才だな」
「天才、ですか?」

そうなんだ、藍さんが言うからよっぽどだな。

「ああ、どんなことでも一度見ただけで吸収してそれを使いこなすことが出来る」
「それは…凄いですね」

それ人間なのか?

「その代わり、少し人間性に問題があってだな…」
「人間性というと」
「余り他人に興味が無いんだよ、まるで空気のような雰囲気を纏っていてな。そのせいで人を寄せ付けないのも偏屈具合に拍車をかけてる」

要するにぼっちか、人間というのは他人と違うというだけで疎外してコミュニティから排除しようとする。
凡人ならばそこで折れてしまうことだろう、しかし天才は違う。
何故ならばそれを乗り越え人の上に立つことが出来る才能を持っているからだ。
俺にはそんなこと到底理解も出来ないが、博麗の巫女がそんな人間だということは今わかった。

そして、出来るだけ博麗の巫女には関わらないでおこうと決心した。俺は天才とか才能とかいう言葉が嫌いなんだ、姉様達?あの人達は天才というよりは怪物だ、嫉妬する気すらおきない。俺の醜いところが全面に出ているなぁと思った。まあ直す気は無いけど。

「気になるならば会ってみるか?」
「遠慮しておきます」

会ってたまるか、意地でも会わんぞ俺は。

「め、珍しく食い気味で答えたな…」
「それよりも、今日の晩御飯の話をしましょう」

辛い時は飯の事考えるに限る。

「ああ、今日は紫様が持ってきてくれたホッケという魚の干物とほうれん草の味噌汁だ、あと白菜の漬物もある」
「ホッケ…?」

ホッケ、ホッケ!いい響きだ!大好きな干物をここでも食べられることに感動する。やったぜ。

「海というところで捕れる魚だ、この幻想郷には海が無いからな。海の魚は必然的に外から持ってくることになる」
「海…本で読んだことがあります」

そういえばあの本はどんな内容だったっけ?確かサメが出てきて…なんかクソみたいな内容だった気がする。

「そうか、なら今度紫様に言って外の世界の海に連れて行って貰うか?」
「外の世界…」
「そうだ、こことは違ってお前にとっては新鮮だろうな」

今、外の世界はどれぐらい時間が進んでいるのだろうか。もしかすると俺の前世の世代くらいかもしれない。
ならば、俺の家族に会えるかもな。そう思い自分の住んでいたところを思い出す。

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