幕間「もしも中の人がアルクの記憶を全く持ってなかったら」
いやここどこよ。
昨日は三日ぶりに家に帰り布団で寝た筈なのに気がついたら何か訳の分からない部屋に入れられていた。俺はキョロキョロと部屋を見回しながら自分の頬をつねる、めちゃくちゃ痛いから現実だということを認識し現状把握に務めるが全くもって何もわからない。
いや、おかしいだろこれ。まさかドッキリか何かの企画か。とりあえず自分の身体になにかされていないか確認する。どうやら何もされていない……ん?なんか身体のバランスおかしくないか?そう思い身体をもう一度確認する。
「…いや、嘘だろ?」
まさかのまさかだ。俺の身体が魅惑のショタボディにトランスフォー厶していた。
ぺたぺたと身体を触るがサラサラの髪と長いまつ毛は変わらず存在感を放っている。鏡があれば全身を見れるというのにここには何も無い。ベッドと机しかない部屋にこんな美ショタを放置するとは紳士の風上にも置けない奴らだな。いや紳士かどうかは知らんけど。
まあそれは置いといて、とりあえず机に手を置き落ち着くことにする。どんな時にも冷静な判断を崩さないのはブラック企業では必須のスキルだ。
「とりあえず部屋を調べる…ところはないな。あとは何かあるといえばあの扉だけか…?」
部屋は一目見ただけで何も無いことがわかるのでとりあえず入口についてる扉に近づく。ドアノブがついているから一応出入りは出来るのだろう。
そう思いドアノブを握る、そして俺は後悔した。えげつない強さの電流が流れて俺を吹き飛ばしたのだ。右手を押さえながらのたうち回る、いや普通にこれ人死ぬだろ。多分手が火傷だらけになっていると思い、チラリと見る。
しかしそこには傷一つない手のひらがあった。
「めちゃくちゃ電撃食らった筈なのに…」
俺は呆然としながらもこれがどういうことか仮説を立てる。一つ目はあのドアノブはただの電流が流れるジョークグッズだったという説。二つ目は何らかの要因で無意識に電流を無効化したという説。三つ目はこの美ショタがめっちゃ強いから大丈夫だったという説。
三つ目は無いな、無い無い。見ろよこの赤ちゃん肌、ツルツルだぞツルツル。しかも二の腕もプニプニしてる。筋肉の『き』の字も無い。
ということはあれは余りにも急な電撃だったから俺が勘違いしただけか。ビビらせやがって。
「まあ、あの扉が怖いわけじゃないけど…他に出入りできるところを探しますか」
そう言い部屋中をくまなく捜索していく。しかし何も無い、ほんとなんなんだこの部屋…?本当のリアル脱出ゲームじゃねえか。まるで頭痛が痛いのような単語を作り出しながら部屋でボーッとする。あんなことがあったから扉にはあまり行きたくない。もう一回やる勇気は俺には無いのだ。
「でもあそこしか無いよなぁ…」
葛藤しながら考えた結果、外からの助けを待つことにした。此処で待っとけば誰かしら来ると思ったからだ。もし人が来たらここから出してもらおう。あと状況説明もしてもらう。
まあこれも長期の休みのようなものと思えば大丈夫でしょ、多分。
そこからの生活はあまりにも怠惰なものだった。毎日何故か机の上に用意されている食事を食べ、適度に筋トレして寝るという生活。グースカグースカ寝るだけの美ショタ、ショタコンには堪らない光景かもしれないが中身はオッサンなのだ。全くもって不本意としか言いようがないだろう。
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