ハーメルン
スカーレット家長男の憂鬱
幕間「もしも中の人がアルクの記憶を全く持ってなかったら」


だが生活の中で一番びっくりしたことがある。なんとこの世界には魔法があるのだ。それは暇がピークに達したときにふざけて壁に向かってかめはめ波の練習をしていたときだった。

()()

出たのだ、かめはめ波が。

そのときに初めてこの部屋に人が入ってきた。しかし俺はその人達のあまりの剣幕に何も言えなくなり黙っていた。そうすると俺は恐らく父親と思われる奴に思いっきり頬を殴られ腹を蹴られた。そんな児童虐待防止法に真っ向から反抗していく行為によって意識を失い、その後はこの部屋に誰も来ることは無かった。

あ、でもたまに胡散臭い美人さんと世間話してるから全く誰も来てないわけじゃないな。

「今思い出してもろくなことやってないな俺」

だがそのおかげで上に人がいることがわかったので魔法で作り出した紙とペンで書いたメッセージを食べ終わった皿に置いておくという涙ぐましい努力を今も続けている。

そろそろ外に出たいなー、なんて思いながらゴロゴロしている終身名誉ニートの俺は外から何やら轟音が聞こえてくるのに気づく。それはどんどんとこちらに近づいてくる。どうやらこの部屋を目指しているようだ。

「この扉強力な結界が張られてる…」
「フラン、いける?」
「問題ないよ」

これは誰だ?誰だ、誰だ、誰だ。いや、わからん。そんな悪魔の力を手に入れそうな音楽を脳内で再生しながら俺は扉の前を警戒していた。でも女の子のような声がいっぱいするし、俺のファンかな?

「きゅっとしてドカーン!」

何やら可愛い掛け声だな、そう思った瞬間にあのビリビリ扉が吹き飛んだ。

「よし、良いわよフラン」

何も良くねーよ、俺の部屋の扉だぞコラ。

「アルク!無事なの!?」
「いや君誰!?ここ俺の部屋なんですけど…?」

久しぶりに人が来たことは嬉しいが優しい人じゃないと素直に喜べない。扉吹き飛ばすような人が果たして優しいと言えるのだろうか。否、それはただのヤンキーだ。

そう思ってこの人達から逃げる為に早々にこの部屋から出ていこうとしたが、壊した張本人達の顔を見て驚愕した。めちゃくちゃ美少女なことにももちろんびっくりしたが、それとは別にめっちゃ泣いていたことに一番びっくりした。え、俺なんかした?そう思ってオロオロしていたが、とりあえず話し掛けてみることにする。

「あ、あの貴方達は…?」
「アルク、冗談よね…?私のこと覚えていないって…」

青髪の子に涙目で詰め寄られるが知らないものは知らない。ここはキッパリ言った方が良いだろう。

「全然覚えてないですね」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「ちょ、やめろよ!こっちが悪いみたいな感じ!」

ほんとさっきから罪悪感凄いからやめて頂きたい。

「じゃあ、アルク私のことは…?」
「君のことも覚えてない」

金髪の子にもバッサリと言う、こういうのは嘘ついたらやばいのだ。正直に言うのが一番。

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