幕間「もしも中の人がアルクの記憶を全く持ってなかったら」
「そっかぁ…仕方ないね…ひっく、うん、仕方ないよね…ぐすっ」
「心が痛い」
もぉー!勘弁してくれよなー!確かに外には出たかったけどさー!
「あの、貴方様はスカーレット家のご子息のアルク・スカーレット様ですよね?」
落ち込んでいた俺に話しかけてくれたのはメイド服に身を包んだ美人な女性だった。メイドとか初めて見たけど…趣深いな。けどその言っている内容は全く知らないものだったので首を傾げる。
「いや、そうなんですか?」
「え、私はお嬢様にそう聞いているのですが…」
へえ、俺の名前ってアルクっていうんだ。今初めて知ったわ。
「実は俺、記憶が全くといっていいほど無くて」
「それ本当!?」
青髪の子が鼻水だらけの顔でまた詰め寄ってきた。うわ、鼻水ついた、汚ねぇ。
「まあ…気づいたらこの部屋に入れられていたので…」
「まさかショックで…?」
あの親だからな、そりゃショックで記憶を無くしても仕方ないだろうよ。
「そういえば貴方達は俺とどういう関係で?」
そういえばこれを聞いておかなければならない。記憶喪失ものでは定番の質問だ。
「私達は貴方の」
「フランはアルクの婚約者だよ!」
「ちょっ」
ええ!?こんな可愛い子が俺の婚約者だって!?
「すごく愛し合っていたんだよ?本当に思い出せない?」
「いや、その、ごめん…」
まじかぁ…これは早急に思い出さなければ。
「ううん、いいの。これから私と一緒に思い出していこう?」
「フランあんた何やってんの!?」
いきなり青髪の子が金髪の子のデコを叩いた。蹲りデコを抑える金髪の子。大丈夫だろうか。しかしいきなり叩くとは良くないな、暴力はいけない。
「アルク!この子嘘ついてるだけだから!このフランは貴方の姉!」
ああ、そういうことか。だから叩いたんだな、納得。
「本当の婚約者は私よ、信じてアルク!」
「ええ!?」
こっちの子が婚約者だったのか。どちらにしても将来有望そうな外見だから嬉しいな。
「お姉様」
「フラン、貴方は部屋に戻ってなさい。私がアルクに説明しておくから」
「ふざけんなオラァ!」
そう言うなり、いきなり金髪の子が青髪の子にタックルした。ま、まさかこれが噂の修羅場とかいうやつか…?俺は戦慄した。
「離しなさい!姉に勝てる妹など居ないのよ!諦めて部屋に戻って昔のアルクの写真で○○○しときなさい!」
あんたはどこの世紀末救世主の兄だ。それにそれは負けフラグだろ。
「お姉様こそ!いつも通りアルクの昔のTシャツで○○○しとけばいいじゃん!その間に私がアルクに紅魔館の案内しとくから!」
「うわぁ…」
俺は端的に言ってドン引きだった。
「アルク様」
「な、なんですか?」
メイドさんが全く目が笑ってない笑顔で話しかけてきた。
「お嬢様達はあの様子なので私が紅魔館を案内しますね。その過程で思い出すこともあるかもしれないので」
「あ、はい」
俺はもう言われるがままにメイドさんについて行った。後ろの喧騒を無視しながら。
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