17話
「晴れたわねー!」
「そうですね、今日はちょうど梅雨明けのようですから」
「私はアルクが居ればいつでも心は晴れ模様だけどね」
「フラン、ややこしくなるから黙ってて」
ちょっと待て
「私もアルクさんが居るからかサードアイの調子が良いです」
「ちょっとお姉ちゃんも黙ってよう?」
ちょっと待て
今日は待ちに待った温泉旅行の日。幻想郷の天気は晴れ晴れとし、絶好の旅行日和というところだろう。着替えや遊ぶための道具と期待を背中に背負い、さあ行こうと踏み出したところで俺はここに居ないはずの人達が居ることに今更になって気づく。
「いやあの」
「どうしたアルク?トイレか?」
いやそうじゃなくてですね妹紅さん。まあ、貴方は良いんですよ俺が呼んだし、この前のお返しの為に。
「そうじゃなくて、なんで姉様達とさとりさん達がここに?」
「ああー…私が呼んだのよ。呼ばなかったら後でややこしくなりそうだから仕方なく」
えぇ…なんか嫌な予感しかしないから凄く嫌なんですけど。正直に言うと帰って欲しい。絶対姉様達は旅行中も俺に頭おかしいくらい過保護に接してくるし。この際直接言うか?
「アルク、私達居ない方が良かったかな?かな?」
フラン姉様、その顔で俺に近づいてくるな。目にハイライトをダウンロードしてアップデートしてから来ようか。話はそれからだ。
「…私はアルクさんの友達ですから普通誘われる筈では?それとも友達と思っていたのは私だけだったんですか?ですか?」
さとりさんはブツブツ一人で呟くのやめて、妹さんがめちゃくちゃ冷たい目で見てるよ。こんなことになるならこいしさんだけで良かったよ。こいしさんはわりと常識人だしな。
「別に嫌な訳じゃないよ?ただ、理由というかなんでだろうって思ったから」
そう言ったら二人が元気良く手を挙げる。さながらそれはクラスの優等生。おー元気だね、そのまま寺子屋でも行ったらどうだい?と言いたくなるがぐっと堪えて言い分を聞く。
「はい!アルクが絶対そこの行き遅れクソBBAと発情キツネ&発情黒猫にマワされると思ったからです!」
「はい!私はアルクさんの友達だからです!友達は特別なんです!友達は絶対なんです!友達は不滅なんです!」
どっちもやべぇ。
そんなこんなで目的の温泉宿までの山道を登って行く一行。
え?スキマで一気に行かないのかって?
いや、それしたら旅行じゃないだろ。旅行というのは山あり谷ありで不確定な要素があればあるほどに楽しいんだよ。宿は汚くていい、景色は汚くていい、ただし飯と風呂だけは最高のものを。それが俺の旅行哲学。そう、だからトラブルさえも笑っていけるような…
「ねえアルク、八雲の奴らにいじめられてない?」
フラン姉様は最初から最大レベルのトラブル発生させすぎじゃない?そのせいでまるで永久凍土のように八雲の皆さん達の周りの空気が凍り付いたよ。やったね。
「フランドール、それはどういう意味だ?」
「いやー何か貴方みたいな性格キツそーだし胸もキツそーな人に任せて大丈夫だったかなーって」
藍さんのこめかみに青筋がぴきりと一瞬浮かび上がった。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。しかしその後、口を釣り上げふふん、と笑う藍さん。その姿に怪訝な顔をする姉様。
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