幕間「名探偵だよ!妹紅ちゃん!」
何の変哲もない平和な幻想郷、こんな日は風にゆらりゆらりと身を任せうとうとと寝てしまいそうになる。藤原妹紅はそんな当たり前な日常を謳歌していた。
職場であり趣味でもある焼き鳥屋も客足が落ち着いたので、夜まですることが無い。友人である慧音の所にでも向かおうかと腰をあげる。どっこらしょ、とおよそ女性が一般的に使うことのない掛け声を出しながら。
スタスタと人里の方に歩いていく、お土産に持ってきた焼き鳥の冷めないうちに向かわねばと、ある種の使命感に駆られながら。
人里の守衛に少し会釈して人里に入る。里の守護者も兼業している自分は顔パスで入れる、そのうえ歩いていると野菜や魚を押し付けられいつも慧音の元に着くまでに大荷物になってしまう。
そんなにいらないと言っても、無理矢理笑いながら渡してくるから少し困るのだが。まあ人柄が良い奴らばかりなので困る事はあっても怒ることは無い。実際、焼き鳥屋の箸休めみたいなものを作るときには便利だったりするし。
両手に食材や調味料を抱えながら寺子屋の扉を叩く。この時間なら慧音は授業も終わり休んでいる筈だ。
「はいはい、って妹紅じゃないか。どうしたんだ?」
青髪がひょこりと扉から頭を出しこちらを不思議そうな目で見てくる慧音。あの可愛らしい容姿から、あの威力の頭突きが炸裂するのだから恐ろしいものである。
「遊びに来たんだ、焼き鳥屋が暇になったし」
焼き鳥を入れてある容器を見せながら慧音に笑いかけると慧音も笑い返し、快く中に入れてくれた。
焼き鳥を片手に慧音と駄べる。慧音は酒を飲んでいないがそこには和気あいあいとした雰囲気が満ちていた。
慧音はあまり酒は飲まない、飲むとしても次の日が寺子屋の授業じゃないときと決めてるらしく、私が飲んでいても慧音が飲んでいないことはざらにある。何とも教育者のお手本のような奴だ。
そんな慧音が、素面だから余計にだろう。凄く深刻な顔をしていた。慧音がそんな顔をするときというのは生徒か、もしくは近しい間柄の人間に何かあった時だ。一体どうしたというのだろう。
「あ、いや。ちょっと今相談を受けていてな」
「相談?」
まあ、教師としてかなり慕われている慧音に相談するのは、至極真っ当なことだろう。私が仮に生徒でもそうする。
「お前なら言ってもいいと思うから言うが…それがアルクからなんだよ」
「アルクから?」
へぇ、あいつから。友人である私より先に慧音に言うというのは、よっぽどの事なのか。
正直検討がつきすぎて、どれなのかわからない。悩みの種は姉か、居候先か、さとり妖怪かどれだ。私がそうしてうんうんと唸っていると慧音がその相談内容を言いにくそうに話し始めた。
「それがだな…下着泥棒が頻繁に起こる、らしいんだ」
「ああ、なんか納得だ」
「ええ…」
慧音が困惑しながらなんとも言えない表情を浮かべるが、こっちにしてみたら予想してたものの中の一つだ。あいつらならやりかねん。
「それでだな、妹紅。お前さえ良ければ犯人を突き止めてくれないか?」
なんでも、寺子屋の生徒では無いとはいえ、相談してきたいたいけな子供を見放す訳には行かない。ということらしい。私としても友人が変態共に困らされてることを見過ごすつもりは無い。全員罪を裁いてやる。
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