ハーメルン
勇者の記録
勇者のサブクエスト#2

 トレセン学園にある栗東寮から離れた空き地、そこは手入れがされておらず地面にところどころ雑草が生えている。そして人が通ることは少なく、明かりも太陽が落ちた夜では寮に続く道を照らす街灯が唯一の光源になりその光は弱い。その微かな光にエイシンプレストンが映し出される。直立不動の姿勢で目を閉じて静かに息を吐く、

 吸って吐いて吸って吐いて。

 そして三回目の深呼吸と同時に目を開き右手に持っていた物を動かす。短い棍棒二つを鎖で繋いだ武器、ヌンチャクである。
 エイシンプレストンはゆっくりとしたヌンチャクワークから徐々にスピードを高めていく。右肩から右脇を通り左肩から左脇へ高速で動くヌンチャクは、素人ではどう動かしているかわからないものだ。
 ヌンチャクを操作するプレストンの10メートル前にアグネスデジタルが現れ、手にはバケツを持っており中から何かを取り出す。その両手には球体のような物体を持っており、全力でプレストンに投げつける。
球体がプレストンの体に当たる瞬間、ヌンチャクで球体を弾き飛ばす。すると球体は破裂し液体が体を濡らした。
 デジタルはそれを見ると二球目三球目と次々と球体を投げつける。その球体のうち二つはプレストンのヌンチャクで撃墜されるが、最後の一つはプレストンの腹にぶつかりポトリと足元に落ちた。


「1つミスしたか。残りの水風船を投げて」
「わかった。いくよ~」


 するとデジタルは水風船を取り出して振りかぶり全力で投げつけた。

 それは年が明けて少し経った頃、デジタルとプレストンの部屋にプレストン宛に宅配便が届く、その中身はヌンチャクだった。
 プレストンが見た香港のアクション映画で、主役が巧みにヌンチャクを操り敵を倒していくシーンがあり、目を輝かせて見ていたのをデジタルは覚えていた。きっとそのアクション俳優に憧れ購入したのだろう。デジタルも好きなウマ娘の人形や勝負服のレプリカなどを購入していたので気持ちは理解できた。
 
 次の日からヌンチャクを部屋の中でアクション俳優のように振り回し始める。だがその技術は拙くヌンチャクはすっぽ抜けてデジタルの私物を破壊していく。それを悪く思ったのかプレストンは次の日から外でヌンチャクの練習をし始めた。
 ここ最近プレストンは香港に傾倒しすぎている気がする。ヌンチャクを購入したきっかけの映画も香港の映画だった。これでは香港製と言われればどんな物でも買ってしまいそうな勢いだ。だがプレストンは聡明でありそういった詐欺には引っかからないだろうし、このマイブームも一過性のものであると思っていた。
 だが練習は毎日行われ、ふと様子を見てみると見間違えるほど上達したプレストンがいた。そしてある程度ヌンチャクを扱えるようになったプレストンは第二段階として投擲物をヌンチャクで弾く練習をし始めた。


「今の水風船で終わりだよ」
「わかった」


 プレストンはヌンチャクを地面に置くと空手の型のような動きを始め、デジタルは地面に座りながらそれを眺める。これはとある香港のアクションスターが作り上げた武術の型らしく、これもヌンチャクの練習を始めた頃から並行してやり始めた。最近はトレセン学園の近くの道場に通っているそうだ。


「プレちゃん、上手くなったね」
「わかる?自分でも上手くなっているのを実感している」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析