勇者パーティー魔都香港へ#2
「オラオラオラ待てデジタル!」
「ちょっとキンイロリョテイちゃん怖い~」
「いつもそんな五月蝿いんですか?」
ウッドチップコースで3バ身先を先行しているアグネスデジタルをキンイロリョテイは猛然と追走する。その様子はまるでサバンナで獲物を追い立てる肉食獣のようである。
デジタルは追い抜かられないように走る、いや逃げると表現したほうが適切かも知れない。その証拠にデジタルの表情が珍しく恐怖で少しばかり引き攣っていた。
そしてエイシンプレストンはキンイロリョテイを並走しながらデジタルを追走する。感情を爆発させるリョテイとは対照的に体の細部に意識を配らせ最大限に力が出せるフォームを維持しながら走る。
香港国際競走がおこなわれるシャティンレース場、一体はレース場だけではなく日本のウマ娘が生活するトレセン学園のようなものもあり、そこで生活するウマ娘達はすぐにレース場に向かうことができる。
また海外から遠征にきたウマ娘達にもトレーニング場を開放しており3人も本番にむけて調整をおこなっていた。
今はアグネスデジタルを先行させ、リョテイとプレストンが後から追走する追い切りメニューである。そしてこの1本はデジタルが半バ身ほどリードを保ちゴールした。
「ちくしょう差し損ねた!もう1本行くぞ」
「ねえプレちゃん、今度はプレちゃんが前走ってよ。怖いんだけど」
「先行するデジタルをあたし達が追走する。これはトレーナー達が本番を想定したメニューなんだから勝手に変えちゃだめよ。それにこっちだって目をギラギラ光らせるキンイロリョテイさんと並走するの怖いし」
「ゴチャゴチャ言ってねえで行くぞ!」
リョテイはデジタルを引きずるように追い切り開始地点に移動し、プレストンはその後をついていく。その様子をトレーナー達は専用のスペースで双眼鏡越しから真剣な眼差しで見つめていた。
「みんな調子はまずまずと言ったところやな。しかしリョテイはこんなに五月蝿いんか池さん?まあらしいといえばらしいが」
「すまんな、白。まあいつもこんな感じだ。最近じゃうちのチームの奴も怖がって前に置くことも並走させることもできず単走ばかりさせていたからな。久しぶりの並走追い切りできて楽しいのだろ」
リョテイのトレーナーはデジタルのトレーナーの言葉に苦笑しながら謝る。二人は同じ年のトレーナーの試験に合格し比較的に年齢が近いこともありプライベートでも仲が良かった。
「しかし稽古でもこんな闘争心を見せるのだから大したものです。けどこの気性は苦労するでしょう」
「ええ本当ですよ北さん。いつも生傷が絶えません。その点エイシンプレストンは真面目で大人しくて羨ましいです」
「でも結構神経質なところがあって意外と苦労します、その点キンイロリョテイは無縁そうです」
「確かに。神経質という単語はあいつの辞書にはないですね」
プレストンのトレーナーの言葉にリョテイのトレーナーはさらに苦笑いを浮かべた。プレストンのトレーナーは2人より年上で定年を間近に控えるベテラントレーナーである。
「しかしあのじゃじゃウマ娘との付き合いもあと少しだと思うと寂しくもありますけどね」
「本当にこれで最後なんか池さん?天皇賞秋のレースを見る限りまだまだやれそうだが」
「俺もそう思うのですけど、本人の意思は固いし尊重したいと思う」
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