嵐
1975年 3月15日
カリブ海上 国境なき軍隊 マザーベース
中米の小国コスタリカとニカラグアで起こったピースウォーカー事件が終結して数か月、国境なき軍隊は多くの戦闘員・兵器そして核戦力を有する強大な組織にまで成長をしていた。
国家・思想・イデオロギーに囚われず、軍事力を必要とする勢力にその力を貸すビジネスは世界中で必要とされているが、反対にその力を忌む勢力も存在していた。
国境なき軍隊の活動が軌道に乗り始めていたが、彼らの持つ核戦力の情報を聞きつけた国際原子力機関が査察を申し入れてきたのもそんな時であった。
「あらかた書類の整理は終わったな、後は査察を受け入れるだけか……」
国境なき軍隊副司令官のカズヒラ・ミラーはここ数日IAEA査察のための準備を終え、激務で疲労した身体を椅子に預けていた。
国籍もなく、核拡散防止条約にも加盟していない国境なき軍隊に査察を申し入れてきたIAEAの真意は彼にも、この基地の司令官スネークにも分からなかった。
一応国境なき軍隊としてはIAEAの査察を受け入れることを決め、不利になる情報は処分し核爆弾を搭載した二足歩行戦車ZEKEも海中に隠すこととなった。
数日前まではマザーベースの司令官であるBIGBOSS、スネークも同じ作業をしていたが今は特別な任務で基地を離れている。
「ミラー副司令官、コーヒーをお持ちしました」
「ああ、ありがとさん」
ミラーが何か飲みたいと思っていた矢先、タイミングを見計らったかのように国境なき軍隊の女性スタッフがコーヒーを持ってやって来た。
女性スタッフが部屋に入ってくるとミラーはあからさまに笑顔を浮かべる。
「ん~、良い香りだ。この芳香な香りとコクのある味わいはモカの高級品だね」
「は、はぁ……すみません、あるものを淹れてきましたので自分には分かりません」
「ははは、今度オレが美味しいコーヒーを教えてあげるよ。おすすめの銘柄があるんだ」
(い、言えない……コンビニで買ってきた安物だなんて)
女性スタッフの考えていることなどお構いなしに得意げに話すミラー、女性スタッフの愛想笑いがとても苦しそうだ。
それからミラーはアプローチをのらりくらり躱され、久しぶりに太陽の下へと行くことにした。
洋上に建造されたマザーベースの甲板上は風を遮るものはほとんどなく、心地よい海風がここ最近の激務で疲れているミラーの心を癒す。
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